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2014年06月25日 前へ 前へ次へ 次へ

自動車部材 飛躍の好機5 「軽量化を究める」

高張力鋼板 構造材軸に採用急拡大
鉄鋼各社、高ハイテン化狙う

 圧倒的なコストパフォーマンスを生かし、自動車重量の約7割を占める鉄鋼材料。世界的に強まる燃費規制に対して車重の30%前後を占める基本構造部(ホワイトボディー)を中心に高張力鋼板(ハイテン)による軽量化の取り組みが加速している。国内では日産自動車が冷間プレスによる1・2ギガパスカル(GPa)級ハイテン部材を、ホットプレスではマツダが1・8GPa級部材を量産車で採用。理論的な強度としては3GPaレベルの高張力化が可能といわれており、軽量化技術のメインストリームとして量産車の重量軽減を牽引していく。
ハイテン(図)[2].jpg 従来材に比べて板厚を薄くできるハイテンは、部材強度を維持しつつ鋼材使用量(重量)を低減できることから構造材を主に急速に採用を拡大。近年の新型モデルでは、ハイテン材の使用比率(ハイテン化率)が従来の40〜50%から60%近くへ上昇するとともに、使われる材料もこれまでの590ギガパスカル(MPa)級から780〜980MPa級へと高ハイテン化が進んでいる。
*EV用は道半ば
 世界鉄鋼連盟は、2011年に加工法と設計技術との組み合わせにより鉄鋼材料のみで800キログラム(Aセグメント)の軽量車体が実現可能という軽量車体開発プロジェクトの研究成果を発表している。ベースの欧州製ガソリン車に対して35%の重量軽減を達成した電気自動車(EV)用の開発車体では、340MPa級超のハイテン比率が97%(重量比)、うち980MPa級超が約50%で30キログラム以上の1GPa級超を使用しており、研究開発の進展による伸びしろを考慮すればハイテン化率および高ハイテン化ともにいまだ道半ばといったところか。
 こうした状況の中、鉄鋼各社では次なるターゲットとして1・8〜2GPa級ハイテンの開発実用化に取り組む一方、高ハイテン化の流れを背景に今後主流となる780〜980MPa級ハイテンの成形性をはじめとしたさらなる特性向上を推進中。加工法についてもメインとなるプレス成形技術では自動車、部品・部材、素材の業界連携が進んでおり、1GPa級以上のハイテンで主流となるホットプレス工法ではすでに新日鉄住金とユニプレスが新冷却方式による世界最高クラスの生産性を実現する独自技術を確立したのをはじめ、直接通電加熱による加熱時間の短縮化といった技術の高度化が加速している。
*成形性など向上
 また、要素技術についてもJFEスチールの多段制御による片側スポット溶接や通電時間の半減と1・7倍の高強度化が可能なパルススポット溶接といった接合技術、神戸製鋼所の金型表面の耐酸化性を高めてハイテンの成形性を向上するコーティング技術など開発が進んでいるほか、水圧を利用したハイドロフォーム成形や3次元の曲げ加工を可能とする3DQといった閉断面構造化による部材強度の向上を目的とする管材成形法などもすでに実用化されている。さらに環境省の鉄スクラップの高度利用化事業(12年度)では、鉄スクラップを原料に高炉で製造した場合と同等の品質を持った構造用高張力鋼板を試作することに成功。これにより原料ソースの多様化によるコスト面のさらなる競争力向上の可能性も見えてきた。
 世界の自動車生産は新興市場の伸びを背景に右肩上がりで推移し、すでに年間8000万台を上回るまでに拡大している。グローバル供給力や研究開発基盤など鉄鋼産業が有する充実したインフラをベースに、その膨大な需要に対応可能な唯一の基礎素材として今後も自動車のハイテン化が進んでいくのは確実だ。
(続く)
【写真説明】鋼板強度の現状と将来動向


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