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2014年06月20日 前へ 前へ次へ 次へ

自動車部材 飛躍の好機3 「軽量化を究める」 CFRPの2

構造材へ適用拡大狙う
生産性と省エネ達成カギ

 自動車の構造材は鉄(スチール)がベースとなっているが、軽量化に有効なアルミニウムやカーボン素材が注目されている。「これまで生産性が低くて使えなかった」(日本自動車工業会)カーボン素材だが、最近はフレームとボディを一体成形するカーボンモノコック技術の開発も進むなど、量産車への適用可能性が高まっている。構造材へのカーボン素材適用には、炭素繊維の生産性向上や生産プロセスの省エネ化が不可欠とあって、政府も関連技術の開発に力を入れ始めた。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は経済産業省からの委託を受け、炭素繊維製造プロセスの省エネ技術の開発を進めている。高温処理が必要なポリアクリロニトリル繊維(プレカーサー=炭素繊維原糸)の耐炎化工程を省略できる新たな原料の開発、炭化処理の省エネ化技術などの開発に取り組んでおり、「非常にいい手応えを得ている」(経産省)という。
*新たな接合技術
 このほかNEDOや炭素繊維メーカー、自動車メーカーなどが共同で、困難とされている金属と炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)を接合する技術の開発にも取り組み始めた。CFRTPの物性を損なわずにボルトなどを使って機械的に接合する技術や、接着剤を使った接合技術を開発する。
*安価な原糸使う
 炭素繊維最大手である東レは、童夢カーボンマジック(現・東レカーボンマジック)を買収するなど自動車向け事業を強化している。プロペラシャフトで多くの実績を持つ同社は採用部位の拡大を目指して炭素繊維の品揃え拡充も進めており、この一環として米炭素繊維メーカーのゾルテックも買収した。
 東レは航空機や高圧ガス容器に適する「レギューラートウ」という原糸を得意とするが、高価格のため適用範囲が限られる。これに対してゾルテックの「ラージトウ」は原糸4万本以上をまとめて焼成する。焼きムラが起こりやすく品質が安定しにくいが、コストは安いため風力発電や自動車用途に需要拡大が見込まれている。東レの大西盛行専務取締役は「自動車の構造体向けには十分。加工技術の改良で対応していける」とみている。
*ピッチ系も開発
 自動車向けCFRPはアクリロニトリルモノマーからポリアクリロニトリル(PAN)を重合してプレカーサーをつくるPAN系が多いが、石油精製や石炭乾留副産物(ピッチ)を原料にするピッチ系を手掛けるメーカーも自動車向け需要を狙っている。長繊維を製造できる異方性ピッチ(メソフェーズピッチ)の最大手である三菱樹脂は高機能ブレーキ材を開発。炭素繊維のマトリックスにも炭素母材の複合材料(C/Cコンポジット)を使い、4輪合わせて24キログラムもの軽量化が可能という。雨天に走行性が悪化する課題もマトリックス表面を炭化ケイ素化したセラミックス・コンポジット(CMC)にすることで解消した。すでに日本のブレーキメーカーからは将来の市販車に使えないかとの反応があるなど注目を集めている。
 軽くて強いCFRPはコストダウンの進展とともに適用範囲が広がっていく。カーボン素材そのものが高コスト現状では、「樹脂に混ぜるガラスフィラーをカーボンに代えて欲しいとの要望は多いが、値段で折り合わない」(総合化学)。一般的な射出成形機を使い、熱可塑性炭素長繊維強化樹脂製のフロントモジュールを生産しているメーカーもあるが、これもCFRPの高コストを反映したものだ。
(続く)
【写真説明】CFRP製部品を幅広く手掛ける東レ。スチール製に比べて大幅な軽量化を実現している


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