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2014年06月18日 前へ 前へ次へ 次へ

連載1 自動車部材 飛躍の好機 「燃費規制対応待ったなし」

技術革新へ協業"深化"
日系化学、先端素材力フル

 自動車業界と化学業界のつながりが一段と強まっている。自動車大手の業績は好調だが、2020年に世界中で実施される厳しい燃費規制への対応に四苦八苦の状況。膨大な研究費や開発時間を削減するため、ライバル同士の技術提携も当たり前になってきた。内燃機関の効率向上や劇的な軽量化だけではなく、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)といったエコカーの事業化も避けられない。これらのイノベーションに欠かせないのが新たな素材や部品の活用。部材サプライヤーとの協業は深化する一方だ。先端技術を誇るわが国の化学業界にとっては世界に躍進する好機といえる。

     ◇ ◇ ◇
 世界の四輪車保有台数は2012年に11億1456万台、6・3人に1台の割合で普及している(国交省)。しかしエコカーの販売台数は導入先進国の日本においても414万台と、5・4%にとどまる(13年実績=日本自動車工業会)。地球温暖化防止のためには自動車のCO2排出規制強化は当然だが、20年に実施される規制基準は容易にクリアできる水準ではない。
*日本は競争優位
 日本では乗用車の平均燃費20・3キロメートル/リットルが目標。海外の指標はCO2排出量だが、燃費に換算すると米国の場合は19・0キロメートル、欧州は24・4キロメートルになる(経済産業省調べ)。燃費測定法や低燃費タイヤ装着などによる優遇措置の有無を勘案すれば日本の規制が世界一厳しい。それでも軽自動車やエコカーが売れ筋の日本は燃費競争に優位といえる。自動車業界も環境規制の強化は逆にチャンスととらえている。
 これに対し、先進技術導入に前向きなドイツではBMWが画期的なEV「i3」を発売。EVの先駆けである日産自動車「リーフ」が従来車ベースであるのに対して、EV専用設計の車体骨格には軽量化を追求して炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用。独・米の生産工場で用いる電力源は風力発電や水力発電と、徹底的に「サステイナビリティ」にこだわった。このCFRPの材料を供給しているのが三菱レイヨンと独SGLテクノロジーとの炭素繊維原糸(プレカーサー)製販合弁「MRC-SGLプレカーサー」で、大竹事業所内で製造した原糸が「i3」1台当たり200キログラム使われている。
 高価なCFRPを量産に適用しようとする国内自動車メーカーは見当たらない。「やろうと思えばできるがあまりに高い、プレミアムをどこまでとれるか」(トヨタ自動車の内山田竹志取締役会長)が本音だ。しかし、「軽量化対策として業界全体で手を組むのはありうる方向性だと思う。ドイツは競争と協力を分けてものすごい共同研究をしている。日系同士で競争している間にさらわれないようにしなければ」(日産の川口均専務執行役員)と危機感は募っている。
*姿勢異なる米国
 こうした日欧に対して様相が異なるのが米国。「シェールガスの登場によってガソリン価格は下がり、市民は燃費を気にしなくなった」(日立製作所の米子会社)。さらに「ディーゼルはうるさい、汚いイメージがある」と不人気。エコカーでは唯一、「テスラ」が気を吐いているが、「i3」と同じくプレミアムカーの位置づけである。
 注目すべきはFCVの研究開発に1960年台から取り組んでいるGM。日本市場にもFCV投入を考えているGMだが、厳格な高圧ガス規制が障壁になって実現していない。規制緩和のチャンスをうかがっているところだ。
 FCVは既存の内燃機関と似たような使い勝手ができるのが利点。「ちゃんと出しますよ。お約束になってます」(ホンダの池史彦代表取締役会長)と、国内自動車大手は15年以降に市販を予定する。課題の水素ステーションの整備については、「最初のうちは移動式でもいいと思う。初めから普及したときのような状態にはできないだろう」(トヨタの豊田章男社長)とのアイデアもある。
 いずれにせよ新世代自動車の実現に日本の部材技術は欠かせない。先月、都内で開催された自動車関係の催事ではカーボン素材のコンセプトカーに人だかりが絶えなかった。
(続く)

【写真説明】
上「いまやエコカーでも世界1のトヨタ FCVの普及にも力が入るトヨタの豊田章男社長」

下「高コストが課題だが軽さと強さを併せ持つカーボン素材には関心が集まる 三菱レイヨンの子会社「チャレンヂ」が製作したコンセプトモデル「moma」=ボディはフルCFRPコンポジット シャーシはカーボンモノコック 重量1030キログラム」


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