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経営に必要な変化への挑戦と継続力
米イーストマン・コダックが11月、ニューヨーク証券取引所に再上場した。米連邦破産法第11章(チャプター11)に基づく事業再建の発表から約2年で実現した。同社はこれから、商業印刷、パッケージ印刷、ファンクショナル プリンティングなどのコマーシャルイメージング市場で幅広いサービスを提供していくという。
これに対して、ライバル企業の富士フイルムホールディングスはデジタル画像などの時代の流れにうまく乗り、2012年度売上高は前期比0・9%増の2兆2147億円。今期は同6・1%増の2兆3500億円を予想している。両社を分けたものは何だったか。
富士フイルムの古森重隆代表取締役会長兼CEOは近著「魂の経営」のなかで、事業の多角化への意欲がコダックより大きかったことをあげた。コダックも多角化に取り組んだが、流れに乗ることができなかった。また、富士フイルムは本業だった写真フィルム事業の毀損を恐れずデジタルカメラにも力を入れた。だが古森氏は「デジタル時代になったからといって単なるデジタルカンパニーにするつもりは一切なかった」ともいう。デジタルの世界は差別化が難しく、いずれ価格競争が激しくなるとみていたからだ。
研究開発費の面でも、短期的な株価を気にせざるを得ない米国企業に比べ、日本企業の方が長期投資を行いやすいという事業環境の違いもあったろう。
富士写真フイルムから富士フイルムへの社名変更も見事だった。企業にとってブランド力は非常に重要だ。まったく別の名前も候補に挙がったようだが、新たなブランドを世界的に確立するには膨大なコストと時間がかかる。80年にわたり築き上げてきた信頼とブランドを簡単に捨てる必要はあるまい。
さらに同社は経営の多角化を進めながらも、写真フィルム事業を存続している。古森氏は「我々は写真を、人間にとって極めて貴重な文化だと考えている」と言い切る。レンズ付きフィルム「写ルンです」は今でもコンビニや観光地の売店で目にするし、結婚式の二次会などでは今だにインスタントカメラが活躍している。年賀状は写真入りを選ぶ人も多い。
こうした最終商品で培ったマーケティング力をさらに生かすことに期待したい。研究開発企業の場合、良い製品を開発したのだから売れるはずだという思い込みがしばしば見られる。だが、消費者心理はそう簡単ではない。例えば、化粧品は機能だけでなく、ファッションやトレンドの要素も重要だ。来年1月に創業80周年を迎える富士フイルムの今後に注目したい。