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2013年12月12日 前へ 前へ次へ 次へ

色あせない小津映画の魅力

 古い映画を見る楽しみに、その当時の街並みや生活を知ることがある。生誕110年、没後50年を迎えた小津安二郎の作品は、戦後の日本に触れることができる点でも興味深い▼ヤフーの無料映画サイトで、小津作品を日替わりで放映している。戦前の作品から世界的に高い評価を得た代表作「東京物語」までを楽しめる。小津ファンならずともわくわくする企画である▼「小津調」という映画スタイルを確立した昭和24年の作品「晩春」も最近、放映された。戦後作品でコンビを組んだ野田高梧との共同脚本、数多く出演した原節子、笠智衆による娘と父親との微妙な心理を描いた記念碑的作品だ▼大学教授の父親は妻を亡くし、娘の紀子が身の回りの世話をしている。安定して幸せな生活が続いているが、27歳になった紀子が婚期を逃がすことを父親は心配して再婚の意思を示す。紀子は激しく反発して、能の観劇で同席した女性を婚約者と思い込み、嫉妬に狂ったような恐ろしい表情で睨みつける。小津作品で上品な女性を演じ続けた原節子とは違い、ホラー映画を想起させる一場面である▼紀子は父親に説得されて結婚を決意、父親はひとり家に残る。64年前の銀座や鎌倉、横須賀線の車内や車窓からの風景に戦後の明るさ、開放感を感じる一方、家族をあり方に思いを馳せた。


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