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リスクコミュニケーションの深耕を
東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から2年半を迎える。原発事故による放射能汚染問題は収束しないばかりか混乱が広がっている。近年、リスクコミュニケーション(リスコミ)の重要性が指摘され、事業者も前向きに取り組んできた。しかし原発事故後の政府や事業者からのリスク情報は、地域住民や消費者に受け入れられず、逆に不信感を増幅させた。リスコミの原点に立ち戻り、新たな取り組みが求められる。
リスコミの議論の際に強調されるのは、ハザードとリスクの違いを明確にすることだ。ハザードは人や環境に危険有害を引き起こす性質を示す。これに対し、リスクはハザードを持った物質などに触れたり摂取することで起きる危険度である。ハザードを有する物質でも、一定のレベル以下に封じ込めればリスクは回避できる。さらに、科学技術に「リスクゼロ」「100%安全」はないということも原則の一つである。
原発事故後は、微量放射性物質の有無が問題となり、農産物や水産物のみならず加工食品まで「リスクゼロ」が要求された。政府や事業者が提供する情報の信頼性欠如、マスコミ報道がリスクを全く許容しない雰囲気を生み出し、産地や食品メーカーに風評被害を与えた。
化学産業にとっても、リスクとどう向き合うか大きな課題である。ここ10数年を振り返ってもダイオキシン、内分泌かく乱(環境ホルモン)、シックハウス症候群などの原因に化学物質が指摘されて対応に追われた。また化学工場の重大事故は地域住民を含めて多大な被害を与える。大半の化学物質は何らかの危険有害性を有したハザードがあり、そのリスクを発現させないリスク管理とともに、適切な情報伝達や意見交換が迫られてきた。
化学産業は事業者向け工業化学品、消費者向け商品と性格の異なるリスコミのほか、生産拠点では地域住民への情報提供も必要となる。事業者向けには世界的ルールに基づいて製品安全データシート(SDS)提供が義務付けられているが、化学物質による労働災害は根絶できない。最終商品では「絶対安全」を求める消費者に的確に対応できないケースも目立つ。
化学独自の活動であるレスポンシブルケアの一環に地域住民との対話集会を継続的に実施している。東日本大震災を契機に巨大災害に対する不安も広がり、事業所の安全操業への関心は高まっている。地域と一体となった防災対策の視点も必要となろう。化学産業のリスコミは専門家から評価されているが、ステークホルダーの信頼を高めるさらなる努力を望みたい。