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2013年08月27日 前へ 前へ次へ 次へ

{連載 上下} 石化コンビナート 構造改革待ったなし

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「縮小の時代」が到来
大幅コスト削減が至上命題

  日本の石油化学コンビナートでは、15基あるナフサクラッカー(エチレン設備)のうち3基が2016年までに停止することが決まり、規模縮小の時代がいよいよ現実となる。日本全体でみれば余剰設備の削減による構造改善の動きだ。しかし、当該コンビナートにとって設備停止・縮小は固定費を支えてきた大型製品の一角が崩れる一大事。他のコンビナートも他人事ではすまされない。大幅なコスト削減が至上命題となるコンビナートの対応策の実態をみる。(佐藤豊・但田洋平)
※働き方を見直す※
 2014年5月のエチレン1号機(年産39万トン=非定修年)の停止に向け粛々と対応工事が進む三菱化学・鹿島事業所。植田章夫執行役員・鹿島事業所長は「戦艦大和を巡洋艦くらいに落とさないと」と、エチレン1基化で必要なコスト削減の規模感を示す。
 鹿島ではもともと基礎原料供給のメインプラントだった1号機を停止して2号機に1基化する。これにともない、2号機の分解炉の増設や1号機からの配管の付け替え、貯蔵タンクの増設などで合計98億円の設備投資が必要となる。
 一方、1基化にともなう固定費の削減効果は「現在のところ合計で数十億円単位。最大のアイテムは定期修理の減少分の約40億円で、このほか(オペレーター)の間接コストが60人分。ただ、タンクヤードのコストなど1号機が背負っていたその他の間接費の負担者がいなくなる」(植田所長)。
 このため、「働き方、仕事の進め方まで含めて1人当たりの付加価値を見直す。ものづくりに必要な仕事とは何かを考え、コスト削減を絞り出していく」(同)。この一環として鹿島事業所では四日市事業所に続き「ダイセル式の生産革新手法を導入する」(同)など、人材育成に遡った生産現場力の底上げに取り組む考えだ。
※留分活用を追求※
 神奈川県東部にある川崎、浮島の両地区にまたがるJX日鉱日石エネルギーの川崎製造所。燃料油の内需が漸減傾向にあるなか、「原油の付加価値最大化」をテーマに石油精製と石油化学の一体運営で収益を稼ぎ出そうと躍起だ。
 原田耕治所長が勝ち残りの鍵と強調するのはクラッカー留分の最大限の活用。「マーケットや地域のオレフィンバランスが大きく変わるなか、原料バランスをいかに最適化できるか」の思案が続く。昨年夏の大規模定期修理で実施したガスタービンの改良工事もその1つで、メタンガスへ燃料転換することで従来のC4、C5留分を誘導品の原料に回せる体制を構築。「クラッカー原料も非ナフサ比率は30%超が可能で、時期に応じた燃料選択で収益拡大を目指す」(原田所長)。
※活動を見える化※
 さらなるコストダウンを目指して、製品や地区ごとに分かれていた計器室を統合する方針。また、昨年には各部署に横串を刺すためのKX(川崎の未来)活動も開始した。計画保全や環境など7つの部会が業務効率や技術伝承を図るために相互交流や意見発表会を実施し、「バラバラになりがちな各部署の活動を『見える化』するための仕組み。良い手順書があれば皆で共有するなど地道な活動で、コスト削減につなげていきたい」(同)としている。

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問われる真の競争力
今こそ製法革新、連携深化を

 国内のエチレン生産は、米国のシェール革命や中国の石炭化学の台頭が加わることで、近い将来に内需見合いの年500万トンあるいはそれ以下に縮小する可能性が指摘されている。一方で石化製品は産業の基礎素材として、当面は内需見合いの生産が維持されることになろう。残る生産拠点が国際競争力を維持し収益を確保するには、付加価値の高い生産品目への入れ替えや革新的な新技術の導入、近隣企業同士の連携など抜本的な構造改善が不可欠だ。
※誘導品より強く※ 千葉工場のエチレン設備を2015年に停止する住友化学。シンガポール、サウジアラビアに石化拠点を持つ同社は、国内は京葉エチレン(出資比率=丸善石油化学55%、住友化学、三井化学各22・5%)に石化原料供給を一本化する。石飛修副会長は「国内では最新かつ最大の京葉エチレンに一本化しオレフィンコストを低減する。加えて研究開発の成果を具体化し、付加価値の高い誘導品の比率を向上させる」と説明する。
 同社はこれまでにない画期的な生産プロセスを誘導品に導入することで、国際競争力を抜本的に引き上げていく考え。このうちポリプロピレン(PP)は品質向上とコスト削減を同時に達成する新製法を開発中で、「年内にも千葉に小規模の商業設備建設について意思決定する」(石飛副会長)方針だ。
※アイデアを共有※ 大阪府の堺・臨海コンビナート。「ここは日本最弱のコンビナートだ」。設立から10年目を迎えた大阪府の堺・泉北臨海企業連絡会のあるメンバーは、設立以前に近畿経済産業局の幹部からこんな言葉を投げかけられ、「頭を打たれたような思いがした」と振り返る。
 宇部興産や三井化学などが位置するこのエリアは、連携を重視して企業が配置された他の地区と異なり単なる区画整理で構成。パイプラインの敷設による留分融通などが難しく企業間の結びつきが弱かった。しかし、「内需減や景気低迷に直面し、地域連携は必然の結果となった」(宇部興産の山縣賢次堺工場長)。両社をはじめ大阪ガスやJX日鉱日石エネルギー、DIC、コスモ石油など9社が参加し04年に同連絡会が発足。各社の製造所長が月に一度集まり、互いの悩みやコストダウンに向けたアイデアを共有するようになった。足元では「工業用水のコストダウンや防災計画の策定などで成果が上がりつつある」(三井化学の池田俊治大阪工場長)。今後は南海トラフ大地震への備えなどで連携を摸索していく。
※もはや1社では※ エチレンセンターの統合に向け動き出した水島地区。旭化成ケミカルズ、三菱化学、JX日鉱日石エネルギーの3社を中心とした水島コンビナートでは石油コンビナート高度統合運営技術研究組合(RING)を通じた燃料融通を進めてきたが、今年2月からは新たにJXエネルギーの流動接触分解装置(FCC)から出るC4留分を旭化成、三菱のナフサクラッカーの分解原料とする連携が緒に付いた。「もはや1社では生き残れない時代。さらなる連携が組めないか、もっと知恵を出し合っていきたい」(JXエネルギーの安達博治水島製油所長)。
 17年以降と予想されるシェールガスの台頭を前に、手をこまねいていてはその大波に飲みこまれるだけだ。少しでも余裕がある今この時期に何ができるのか。各地域で生き残りのための取り組みが本格化している。


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