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2013年05月20日 前へ 前へ次へ 次へ

中国は化学不安を沈静化する努力を

 中国共産党指導部は、「容認」と「厳罰」を巧みに使い分けて民心把握を努めている。中国各地で頻発している化学工場建設反対に向けた市民デモには、さしずめ「現状容認」が基本方針のようだ。
 先ごろ、上海近郊の松江市で中国企業が計画した大型リチウムイオン電池の組立工場建設に地元住民が反発。衝突には至らなかったものの、警官隊とにらみ合いを起こす事態に発展した。投資企業は「組立工場なので安全」を強調するが、市民側はリチウムは危険物質で環境汚染を招くとして中止を求めた。工場建設がどうなるのか、現状では流動的である。
 昨年、大連市の海岸沿いにあるパラキシレン(PX)プラントの漏えい事故に周辺住民の大規模抗議が発生、大連市長はプラント移転を確約した。寧波でもPXプラント計画が住民運動で頓挫した。最近では、雲南省で計画された内陸型石化プラント計画に「PXの生産計画があるから危険」と建設中止を求める抗議運動が起こった。このほか、南通の大手日系製紙企業に対する排水処理をめぐる住民運動も記憶に新しい。
 今年3月発足した習近平政権は、「経済成長を鈍化させても環境対策に力を入れる」と明言した。地方政府に厳しい通達を出し、環境対策を最優先に取り組むように指示したと言われている。
 中央政府の指示を後ろ盾に盛り上がっている住民運動だが、国民不満の矛先が中央政権や地方政府、官僚腐敗に向けられる可能性も抱えている。大規模衝突が発生した際にどう対処するのか、北京の中央政府は困難な舵取りが迫られそうだ。
 中国では、化学品はすべて危険、化学工場は危ないという風潮が広がりつつある。中国系化学企業のみならず、投資した外国化学企業も大きな懸念を持って事態の推移を見守っている。現在、上海周辺では国家級化学開発区以外は、新増設が事実上禁止されている。天津や青島など古くから化学工場が集積する地域でも同様の動きがある。
 化学工場にはリスクがあるが、それを制御して安全に生産する技術、ノウハウが確立されている。化学品の危険有害性に関しては、適切に情報を提供して製品事故を防止する方策の整備が進んでいる。化学素材や製品が社会生活や産業発展に貢献していることも間違いない。
 中国政府関係者は、化学工場の安全対策や製品事故防止に向けた取り組み、社会にどれだけ貢献しているかを正しく伝えていくことが求められるのではないか。いたずらに不安を煽ることは混乱を招くばかりで、その代償はあまりにも大きい。


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