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2013年02月26日 前へ 前へ次へ 次へ

最先端を維持できる材料開発戦略を

 21世紀に求められる環境・エネルギー、情報通信、ライフサイエンスなど広範な分野のイノベーションを支えるのが材料である。日本の材料技術は世界のトップレベルにあり企業、大学、公的研究機関は優れた研究者を抱えている。一方でグローバル規模の競争も激化し、とくに材料のユーザーである国内産業の競争力低下に不安が広がっている。材料の技術開発や実用化の課題解決のあり方を再構築すべき時期である。
 先ほど東京で開催された新規素材の総合展示会には、ナノテクノロジー、レアメタル、バイオマテリアルなどの関連材料から情報通信、水処理、次世代の燃料電池・太陽電池・2次電池など多様な技術開発の成果が出展された。来場者も多く日本の材料技術レベルの高さを改めて感じさせる内容だった。
 材料は日本のイノベーション、新産業創出の牽引役として存在感を増しているが、一方で関係者から先行きに不安を感じさせる発言も聞かれた。日本の技術開発力は優位を維持しているものの、韓国、中国など東アジアの材料技術は着実に力を付けている。特許や学術論文から判断しても有力な競争相手になっていることは間違いない。
 それ以上に影を落としているのは、国内需要企業の国際競争力低下だ。エレクトロニクス産業の"日韓逆転"に続いて、台湾や中国企業の存在も無視できなくなっている。高度な摺り合わせ技術が求められる自動車、今後の成長分野である環境・エネルギーに関してもアジア企業との競合が起こっている。
 日本の材料の技術開発において、国内企業間の連携は大きな武器だった。材料研究には的確なニーズが必要で、実用化まで長期間を要する。設備投資の判断は最終製品の市場情報が求められるなど、材料企業だけで決断できるケースは少ない。材料は市場を創出できる力を持っているにしても、ユーザーとの協力関係が不可欠となる。それを支えてきた国内企業の競争力低下は痛手で、海外企業との新たな連携を模索する時代だ。
 日本発新素材で事業としても成功しているのが炭素繊維である。その世界トップメーカーの東レは、炭素繊維の商業生産を始めて40年以上経過している。1970年代にレジャー・スポーツ分野の用途開発に始まり、航空機の構造材料に使用できる技術開発、量産を実現した。
 成功の理由を(1)長期間の研究開発を継続する経営者の強固な意思(2)自社による幅広い基盤技術の確立(3)有力なパートナーとの強力な関係(4)政府の継続的支援―の4点を挙げている。材料イノベーションに不可欠な視点だろう。


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