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連載上 試練のケミカルアイランド シンガポール・ジュロン島
用役コストが収益圧迫
新規投資の誘致にも影響
シンガポール・ジュロン島がコスト上昇や人材不足に直面している。エチレンで年380万トン能力と世界トップテン入りを果たし、名実ともに東南アジアトップの石油化学産業の集積地となった。だが、これらの問題を乗り越えない限り、新規投資が見込めないどころか、すでに進出している企業の撤退なども懸念される。実際、一部では撤退準備を進める欧米企業も出始めた。これまであらゆる難局を乗り越えてきたシンガポールの真価が試されている。
(シンガポール支局=渡邉康広)
※天然ガス価格上昇※
「このままでは他のアジア諸国に投資が逃げていくのではないか」。ジュロン島でフェノールなどを生産する三井化学の首脳は、シンガポール経済開発庁(EDB)など政府側との会合でこう訴えた。電力や蒸気など用役コストの上昇で、三井化学だけでなくジュロン島で操業する化学メーカーは一様に収益圧迫を強いられている。問題は燃料である天然ガスの価格が重油価格にリンクしている点だ。
シンガポールの発電燃料は8割を天然ガスに依存し、マレーシアとインドネシアからパイプラインで購入している。数年前までは重油を主な燃料としていたが、急速に天然ガスへの依存度を高めている。しかし、アジアに天然ガスの取引市場がないため、価格は重油リンクのまま。これまで燃料に使用していた重油は安価だったが、近年は原油に連動して上昇している。ジュロン島の電力コストもその影響を直接受けている。この結果、電力コストは日本と比べても4割ほど高く、蒸気はタイやインドネシアの2倍ほどだ。
用役コスト上昇は既存の進出企業を苦しめるばかりでなく、新規投資の誘致の障害になりかねない。東南アジアを候補にエチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)の生産進出を検討するクラレ。同社はジュロン島でポリビニルアルコール(ポバール)樹脂を生産しており、シンガポールは有力候補だ。ただ、現状のコスト上昇などを目の当たりにして「他の東南アジア各国も候補に検討せざるを得ない」と内実を明かす。
※政府も対策打つが※
シンガポール政府は手をこまねいているわけではない。発電設備やコージェネ設備の建設を急がせるとともに、液化天然ガス(LNG)ターミナルをこのほど完成させ、2017年には現状比3倍の900万トンまで受け入れ能力を高める計画を進めている。将来的にシンガポールでLNGの先物取引が始まり、アジア初のLNG市場が形成されれば調達安定や価格低下が期待できる。しかし、スタートは重油価格リンクで変わりない。「具体的にいつ、どれくらい用役コストが下がるのか教えてほしい」。進出企業の切実な声は日増しに大きくなっている。
【写真説明】ジュロン島の用役コストは電力が日本の4割高、蒸気はタイやインドネシアの2倍まで上昇