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2013年02月21日 前へ 前へ次へ 次へ

急がれる製薬産業空洞化を防ぐ政策

 医薬品の輸入超過から、日本の製薬企業が国際競争力を欠如していると見方は正確な分析ではない。大手製薬企業を中心に海外売上高を増やしているが、これに伴い製造拠点も海外に移している。一方で海外製薬企業は、日本市場向け医薬品の大半を海外で生産していることが輸入構造の定着につながっており、製造拠点として日本の魅力が低いことを示す。このまま放置すると、製薬産業そのものの空洞化につながりかねない。
 医薬産業政策研究所が財務省の貿易統計をベースに作成した2011年の医薬品の入超幅は2・6兆円。一方で日本製薬工業協会に加盟する大手製薬26社の海外売上高(10年)は3・2兆円、05年比で50%増加した。これだけ増加しながらも医薬品の輸出はほぼ横ばいに推移しているのは、現地生産で対応しているためだ。これに対し、同期間の製薬協に加盟する海外企業15社の日本売上高は25%増だが、輸入は90%増と輸入比率が高まっている。
 統計目的の違いなどで厳密性の問題はあるものの、わが国製薬産業の直面している課題が浮き彫りになっていると政策研は指摘する。医薬品の輸入超過は拡大しているが、国内生産額も微増を続けており、現時点では製造の空洞化は起こっていないと分析する。しかし、これから製薬産業の空洞化が危惧されると強調する。
 製薬産業のビジネスモデルは、自動車やデジタル家電などの工業製品と違い、画期的な物質の基本特許によって価値を創出することに特徴がある。この知的財産保護を保証する国であれば、製造拠点の選択はコスト競争力で決まることになる。
 日本企業の海外シフトと海外企業の国内生産伸び悩みは、製造拠点として日本が魅力を失いつつあり、これからより深刻な空洞化が懸念される理由だ。スイスのグローバル製薬企業は国外売上高が99%を占めながら、高い収益力を維持しているのは各国の税制を比較して製造拠点を選んでいる。
 日本企業の最大のハンディは圧倒的に高い法人税などの税率がある。政策研ではスイス企業の実効税率は14・4%、米国企業5社平均は2・4%。これに対し日本のトップ5社平均は38・7%。さらに知財収益に対する減税措置(パテント・ボックス)の導入も始まっている。
 製造業の立て直しを掲げ始動した安倍政権は、産業競争力会議で本格的議論を開始した。製薬産業は科学技術を基盤にした知識集約型高付加価値産業で、これからの日本経済を牽引する役割が期待されている。国内をベースに製薬企業が事業を強化できる基盤整備は急務だ。


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