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2013年02月20日 前へ 前へ次へ 次へ

視線を感じる不思議

 電車の中で視線を感じて振り向くと、だれかと目が合ってお互い目をそらす。こんなことがよくある。生物学者の福岡伸一さんは、『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書)の中で、「誰もが経験的に知っているこの不思議な知覚について、意外なことに生物学は未だ何の説明もできていない」と語る。そのうえで「人間の眼が光るからではないか」と仮説を示す▼写真の赤目。あの赤は、眼底の血管網の赤だという。カメラのフラッシュ光を浴びた眼が赤く反射し、それがカメラのフィルムに写る。暗闇の中で猫の目が光るように、人間も視線の方向に光を放つ。人の目は外界の光を捉え、微弱ながらも光を常に反射しているのではないか▼光を受けとる目のメカニズムも関係する。文字を読んだり細かいものを見たりするときは、網膜の中央部の解像力が強く、ごく弱い光は網膜の周縁部で感じ取るらしい。つまりこういう流れ。「誰かがこちらを見ている。その眼が反射した微弱な光を、目の縁でとらえる。なんとなく視線を感じる」。この仮説は、斜め方向から見られていた気がすることが多い実体験と一致する▼人と人とのファーストコンタクトは、この斜めからの視線だといえるかもしれない。目の縁に"おや?"と感じたら何かが始まる合図、敏感でいたいものだ。


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