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2013年01月30日 前へ 前へ次へ 次へ

急ぎたい電力システム改革の方向性

 政権交代を契機に抜本的見直しが迫られているエネルギー・環境政策の議論が遅れている。「2030年代原発ゼロ」を前提にしたエネルギーのベストミックスだけでなく、発送電分離など電力システム改革、20年の温室効果ガス排出量を「90年比25%削減」見直しなどを総合的な角度で検討、方向性を示す必要がある。エネルギー政策は国家の根幹に係わる問題だけに骨太の方針が求められる。中長期、かつ科学的な視点を重視して電力会社も参加した議論の再開を望みたい。
 民主党政権の示した「30年代原発ゼロ」、「90年比25%削減」の見直しを第2次安倍政権の主要閣僚が発言している。競争力のあるエネルギーの安定供給、持続可能な地球温暖化対策は日本経済の再生に重要な課題だけに直ちに取り組みが必要だ。一方、昨年7月にスタートした再生可能エネルギーの買い取り価格引き下げの検討も始まっているが、現状では安倍政権としての電力システム改革を含めたエネルギー政策、再生エネなどのグリーン・イノベーション戦略の方向性は明確ではない。
 原子力規制委員会による原発再稼働に向けた安全確認、核燃料サイクル政策など国民的合意は簡単ではないだろう。しかし原発停止にともなう液化天然ガス(LNG)の輸入急増によって、昨年の貿易赤字は過去最大の6・9兆円に拡大するなど、電力問題が日本経済の先行きに影を落としている。
 もう一つの課題は、総括原価方式や垂直統合型による日本の電力システムの見直しだ。昨年7月に経産省の電力システム改革委員会は小売り全面自由化、送電網を開放して発送電分離で競争重視に転換する電力産業の再編の方針を示した。並行して太陽光など再生エネの積極的拡充に乗り出し、太陽光発電による買い取り価格を1kw時当たり42円という高めの価格を設定して導入を支援している。
 問題は原発再稼働の見通しがないままに、電力システム改革に踏み切ると電力供給網を混乱させる懸念がある。予想以上に高めの価格設定となった太陽光発電事業には、遊休地を抱える企業や自治体の参入が相次いでいるが、優先的な引き取り義務が生じるだけに電力の安定供給と電力料金上昇につながる可能性がある。再生エネで比較的安定した出力が見込める海上風力発電や地熱発電は稼働までに期間がかかり当面の供給源として大きくは期待できない。
 安定した電力システムは経済活動や国民生活の基盤だけに的確な見通しと冷静な議論を前提に、あるべきグリーンイノベーションと電力システムの姿を早期に提示してもらいたい。


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