ニュースヘッドライン記事詳細

2012年11月27日 前へ 前へ次へ 次へ

ゲノム育種技術で安全なコメに貢献

 人体にとって有害なカドミウムを土壌からほとんど吸収されないイネが、遺伝子組み換え(GM)技術を用いることなく作出された。東京大学、農業環境技術研究所による研究成果で、イオンビームを照射し、コシヒカリの変異体を得て遺伝子を調べたところ、吸収に関与する機能を失った遺伝子が見つかった。変異遺伝子の検出に利用可能なDNAマーカーも開発したことで、ゲノム育種による多様な品種づくりが可能になる。さらにこの知見をもとにコメ以外の作物にも応用展開が見込まれる。カドミウムに汚染された土壌は世界各地に存在するが、日本発の技術が国際貢献につながることを期待したい。
 ゲノム育種はゲノム情報に基づき、DNAマーカーを使い、目的遺伝子が交配した植物に伝わっているか、否かを遺伝子の配列の違いによる多型から判別し選抜する育種技術。10年はかかるとされる在来育種法に比べ、3-4年程度の短い期間で育種に辿り着けるといわれている。国内では敬遠されがちなGMとまったく異なる方法だ。
 カドミウム対策には客土工事があるが、10アールあたり300-500万円のコストが必要になる。または出穂前後3週間、水を張り吸収を抑制する湛水管理を実施する方法が知られるが、土地の形状や条件などにより用水を引き込むことの難しいケースもある。
 国内産地からは食品衛生法で定めたコメに含まれるカドミウムの基準値1キログラムあたり0・4ミリグラムを上回って出荷されることはない。ただ消費者に安心を与えるために、カドミウムの蓄積されないコメを望む声は多い。今回、作出したイネはコシヒカリをもとに改良し、収量、食味、生育状況がこれまでの試験で従来のコシヒカリとほぼ同じという結果を得ており、来春の品種登録申請を目指している。
 実用化されると、農業生産者にとって栽培の選択肢を広げる効果もある。実用化に向けて気をつけなければならないのは、従来品種から切り換える際に栽培地がカドミウムに汚染されているなどという風評被害を発生させない環境の整備だろう。この支援を農水省や自治体に望みたい。
 ダイズやトウモロコシなどの主要作物にGM技術が利用され、欧米では大手種子メーカーの戦略で急速に栽培面積が拡大している。日本勢もこの技術の有用性を常に注視し、技術水準の向上に取り組む必要がある。一方、ゲノム育種は、国内のニーズに合致した技術だけに地域経済活性化につながる品種開発の事例を増やし、日本の誇る育種技術として定着させていく意気込みも求められる。


Copyright(c)2010 The Chemical Daily Co., Ltd.