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2012年11月22日 前へ 前へ次へ 次へ

ブラッド・ペイジ グローバルCCSインスティテュートCEOに聞く

CCS抜きに温暖化対策なし

 東日本大震災以降、わが国では地球温暖化問題を巡る議論が大きく後退した。原発事故によって電力供給を石油など化石燃料に頼らざるを得ない状況に陥り、CO2削減の方向性が不透明になったためだ。一方、世界に目を転じるとCO2削減は待ったなしの状況。有力な手法として、CO2を回収し貯留するCCSの本格導入が待たれる。19日から京都国際会議場で始まった第11回温室効果ガス制御技術国際会議では、CCSに焦点を当て、研究発表と実用化に向けた議論が活発に繰り広げられている。CCS推進の第一人者であるグローバルCCSインスティテュート(GCCSI)のブラッド・ペイジCEO(写真)に聞いた。

 ― CCSの現状をお聞かせください。
 「現在、世界全体で75件の大規模統合プロジェクトが存在する。このうち8件で実際の運転が進行中で、毎年2300万トンのCO2を貯留している。5件は北米地区で、欧州でも実施されてしている。その一歩手前の建設段階のプロジェクトが8件ある。2015年には、CO2貯留量は年間3300万トンになる。、ほとんどが掘削できないまま鉱床に残る油やガスを採掘するEORやEGRに用いられるものだ。最近では中国で11プロジェクト計画が公表されている。日本でも北海道・苫小牧沖で大規模実証が始まろうとしている」

 ― CCSの安全性は。
 「安全性には自信を持っている。ノルウェーでは年間100万トンのCO2を貯留するプロジェクトが実施されている。すでに10年経つが問題はない。またオーストラリアでも6万トンを貯留したプロジェクトがあるが、CO2の漏れは報告されていない」

 ― CCSは12年前から取り組まれて来たが、普及は遅れている。
 「10年前は3プロジェクトだったことから考えると確実に進展している。ただ、遅いとの指摘も分かる。1つは欧州の経済問題。そしてCDM(クリーン開発メカニズム)に組み込まれてこなかったためだろう」

 ― 欧州危機は排出権取引などにもダメージとなった。今後の運営に問題はないか。
 「欧州連合域内排出量取引制度(EU ETS)を活用することで、一定の資金は調達できるはずだ。最近、イギリスでCCSに対する関心が高まっており今後の展開に大きく期待している。取引制度の在り方についても広く意見を求めているところだ」

 ― とはいいながら知名度はまだ低い。
 「同感だ。紙媒体はもとよりウェブなども使って認知度アップを図っている。学生向けの教材なども作製している。この教材には日本のほか、カナダや韓国、インド、イギリス、メキシコなどが興味を持っているという。新聞などを利用して社会的な重要性を訴えてもいる」

 ― 今後の普及に際しての課題は。
 「政策面と社会的受容性だろう。温暖化対策は待ったなしであり、各国政府がどれだけ真剣に向き合うかがポイントだ。実質的でタイムリーな政策支援を継続させる必要がある。各国政府と産業界による実証プロジェクトへの資金提供は不可欠だ。当面は欧州の債務危機が解決し、経済問題が落ち着くのを待たねばならない。必要な要素技術については、すでに確立していると言っていい。本格的に普及させるためのカギは、いかにコストを下げられるかだと思う」
 (聞き手・野開勉)


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