2012年10月の記事を読む
2012年9月の記事を読む
2012年8月の記事を読む
2012年7月の記事を読む
2012年6月の記事を読む
2012年5月の記事を読む
2012年4月の記事を読む
2012年3月の記事を読む
2012年2月の記事を読む
2012年1月の記事を読む
2011年12月の記事を読む
2011年11月の記事を読む
2011年10月の記事を読む
2011年9月の記事を読む
2011年8月の記事を読む
2011年7月の記事を読む
2011年6月の記事を読む
2011年5月の記事を読む
2011年4月の記事を読む
2011年3月の記事を読む
2011年2月の記事を読む
2011年1月の記事を読む
2010年12月の記事を読む
加速させたい大学院博士課程の改革
新興国企業も含めて激化一方の化学産業の国際競争。日本企業の生き残りの決め手は技術開発力である。それを支える優秀な研究者を産業界と大学が連携して育成しようという試みが「化学人材育成プログラム」だ。日本化学工業協会を事務局に活動を開始して約2年、大学側の意識改革も進む一方で、産業界のより多面的な支援を望む声も強い。産学の意思疎通をより深め、優秀な研究者の活躍の場を広げる取り組みを望みたい。
化学産業は、大学などで生み出した基礎研究の成果を製品開発やプロセス開発につなげて発展してきた。産学は共同研究や技術系人材の供給などでパイプを構築してきたが、採用は学士や修士が大半で、博士修了者は少ない。企業はプライドの高さなどから博士採用を敬遠、修士を中心に自社の研究所で育てたいという意向が強かった。
博士課程を修了したポスドク研究者に安定した就職先がないことは、産業競争力向上を阻害し国家的損失につながっている。経済産業省の支援を受けた日化協の人材育成プログラムは、他産業に先行した取り組みとして注目されている。プログラムは産業界の求める博士人材の育成に取り組んでいる大学院専攻を選んで支援を行う。現在の支援対象は16専攻に広がっているが、このなかで優秀な学生には奨学金を給付する。
このほど行われた「化学人材育成プログラム&研究発表会」で、カリキュラムの実践的改革を実施している大学院の発表があった。共通するのは、研究論文至上主義や特定の専門に固執した"たこつぼ"研究から脱却しようとする試みである。
産業界が博士研究者に要求するのは、特定分野の専門性と幅広い基礎的学力、課題解決を仮説に基づき実行できるマネジメント能力を持った人材だ。さらにリーダーシップやコミュニケーション能力に優れ、国際感覚を有する人材を育てようとする大学の意気込みを感じた。
このような取り組みが広がることを期待したい。一方で、大学からはより多面的な支援を望む声が寄せられている。奨学金の対象者は限定されているだけに、博士研究者の採用拡大や待遇改善など産業界の改革も迫っている。協議会に参加している企業からは、博士研究者の底上げに向けた支援強化が指摘されており、カリキュラム見直しなどの情報発信も必要だろう。
人材育成に関する産学のミスマッチ解消に課題は多いものの、交流を強化しようという雰囲気を大切にすべきである。化学産業の競争力の向上にとどまらず、社会ニーズを視野に入れた基礎化学の強化にも貢献することになる。