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2012年10月26日 前へ 前へ次へ 次へ

バイオ企業育成に日本型モデル示せ

 バイオ産業の創出と発展に欠かすことのできないバイオベンチャー企業。しかし、国内では停滞が続いている。とくに資金不足に悩む企業は多い。iPS細胞で山中伸弥博士がノーベル賞を受賞したのを契機に、再び日本にバイオベンチャーブームが起こり、世界に誇れる日本発技術、産業成長モデルが構築されることに期待したい。
 バイオインダストリー協会の調査によると、日本のバイオベンチャー企業は2006年の約590社をピークに減少傾向にある。ベンチャー設立のプロセスは米国と大差ないが、育成し継続的に運営する環境に関しては、大きな違いがあるといわれる。関西圏や北海道などでは、地域ぐるみでバイオクラスター形成に力を注いでいるが、国全体を見渡せば開発型ベンチャーが設立3-5年後に経験するといわれる資金不足問題をフォローする仕組みが備わっていない。この背景に、バイオベンチャーキャピタル(VC)の果たすべき役割の決定的が違いがある。
 もっともバイオ発展のための国家目標はあるものの、効果的に戦略を実現に導く司令塔となるべく組織は不在である。政治的指導力のない点もバイオ産業育成を阻害している。
 その一方、わが国では創薬・製剤開発を目指すベンチャーが手堅く運営しているケースはある。創業から一定期間、収益確保のために健康食品素材や化粧品、農業関連、環境調査研究などを製品化していることが多い。必ずしも大きな成功ではないが、何とか安定収益を確保しているようだ。
 欧米では地域・大学の連携組織や州政府内に産業化の可能性を見つけ出す目利きのできる人材に加え、経営のあり方や知財活用を指導するなどのサービスも用意され、研究開発に集中できる環境が整備されている。これに対し日本では、ベンチャー自ら膨大な雑務をこなし、設立数年後の資金不足への不安が付きまとう。
 米国でも資金難による「死の谷」と呼ばれるハードルを乗り越え、VCからの信頼確保、競争を勝ち抜いた企業ばかりではない。しかし、日本では10年以上前から米国並みの支援体制整備が叫ばれてきたが、改善されていないのが現状だ。
 バイオ技術で飛躍を目指す製薬・医療産業の求める技術開発レベルに達するまでの間、食品や化粧品、機器企業あるいは産業団体などがベンチャー企業に投資し、成果を基盤技術などとして還元する産業連携、医療への橋渡しという概念を取り入れることも選択肢ではないか。民間資金活用の仕組みを体系的に整備することは、日本独自のバイオ育成モデルにもなる。


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