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2012年10月15日 前へ 前へ次へ 次へ

住友化学 十倉雅和社長に聞く

 石油化学事業の予想以上の低迷により、収益悪化に直面している化学メーカー。環境・エネルギー関連などの新事業も世界経済の減速で立ち上げが遅れている。厳しい局面をいかに乗り切るのか、住友化学の十倉雅和社長に聞いた。

●足下の事業環境認識は
 当社の事業を石油化学、情報電子、ライフサイエンスの3分野でみた場合、石油化学が相当厳しい状況にある。中国をはじめとした需要や市況いぜん低迷が続いている。マージンもシンガポール拠点も含めて、創業以来の最悪期ともいえる状況だ。
  一方で、ライフサイエンスは、景気変動の影響を全く受けていない。医薬品は新薬の開発が順調で、農薬も世界の食糧増産を背景に円高は厳しいものの収益を維持している。情報電子も当初の予想ほどではないが回復基調にある、今年度は増益の見通しだ。

●こうした環境にどう対応しますか
 当社は2000年代に入り、石油化学事業の抜本的な競争力強化、ライフサイエンス事業の規模拡大、新規事業としての情報電子材料事業の育成、の3つを最重点課題に掲げ、長期的視点に立った経営を推進してきた。
 石化では世界最大級の石化拠点であるサウジアラビアのラービグ計画を推進し、今年は2期計画も決断した。製薬は内外でM&Aを実施し、大型新薬の開発も進めた。情報電子化学は偏光板などLCD向け部材を中心に内外で投資し、売り上げ規模を2000年初頭に対し約6倍の3500億円規模に成長させている。これらはいずれも巨額の投資と時間のかかる取り組みであり、ラービグ計画などは当初の想定に対し投資回収が遅れているのも事実だ。また、積極投資を継続してきた結果、財務体質も悪化している。
 このため13年度から始まる次期の中期経営計画では、10年の計で進めてきた積極投資の総仕上げの期間と位置付け、回収・収益化を加速する。また、設備投資の厳選、固定費の削減、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の効率化、為替感応度の緩和などを進めることで、「財務基盤の強い住友化学」を取り戻す。

●ラービグ拠点の収益状況は
 昨年の定修で設備面での対応を図り、運転ノウハウも向上してきたことでようやくフル稼働体制となった。この下期から、所期に期待していた収益も視野に入ってきた。
 ラービグにはエタン原料ベースの石化、石油精製ベースの石化、石油製品の3つの製品ラインがあり、それぞれ収益構造が違う。このうち、石油精製ベースの石化は日本やシンガポールと同様の構造で、収益は厳しい。一方で、エタン原料の石化は、原油価格が上昇するほど優位なマージンを享受できる。また精製マージンもここにきて1バーレル当たり4ドル近くまで回復している。

●国内の石化は縮小均衡が始まっています
 中東に加え、北米でシェールガスベースの石化計画が勃興することで、構造的に日本からの輸出は厳しくなると覚悟しなければならない。再編によるダウンサイジングが必要となろう。当社はラービグやシンガポールに拠点を持つため状況が異なる部分もあるが、他社との連携も含めた対応を検討していく。
 ただし、化学企業は技術が命であり、日本拠点はマザー工場・マザーラボとして極めて重要だ。しかし現在の6重苦、7重苦の状況では海外に拠点をシフトせざるを得ない。新エネルギー分野や医療・介護分野など、新たな産業分野において化学が果たす役割はたくさんある。日本でモノづくり企業が競争力を発揮できるよう、政府には円高の是正をはじめ、イコールフッティングの実現に向けしっかり本腰を入れてほしい。
 (了)


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