ニュースヘッドライン記事詳細

2012年09月27日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載】元素をつかいこなせ(下)


水素エネ利用へ開発活発

 元素周期律表の最初にあるのが水素(H)。究極にクリーンで無尽蔵にある水素エネルギーを活用するための技術開発が世界中で活発に行われている。その代表例が水素を原料とする燃料電池。家庭用の燃料電池発電システムが実用化され、燃料自動車は2015年の量産開始が予定されている。燃料電池用部材にととどまらず、水素供給インフラを整備するための発生(製造)・貯蔵・輸送といった分野でも新しい市場が開かれようとしている。
 最近では携帯機器の電源に燃料電池を利用する動きも出てきた。燃料電池製造ベンチャーのアクアフェアリー(京都市)が固体型燃料電池の開発を進めているもので、水素源を外部に頼らず機器内で発生させるのが特徴だ。このほどローム、京都大学と開発した新タイプ(写真右)は水素発生剤として新たに水素化カルシウム(CaH)を採用。シート状に固形化することに成功し、3?に満たないシートから4・5リットルの水素を発生させ5ワット時の電力が供給できる。来年の製品化を目指す。(写真左=ホンダFCXに搭載される燃料電池)

※Nb合金使い膜分離※
 現在、水素の製造は天然ガスなどの化石燃料と水蒸気を反応させる改質法が主流であるため、効率的な精製技術が求められている。そこでシステムが小型で省エネルギーな分離膜法が注目されている。しかし、実用化されている分離膜は高価なパラジウム(Pd)合金が使われている。そこで日立金属はニオブ(Nb)合金の開発に着手した。ニオブは優れた水素透過性能を持つ半面、水素を吸収して脆くなる欠点がある。同社は特殊鋼技術などを生かして合金組織の最適化を図り性能向上を目指す。量産開始の目標は年だ。
 太陽の熱エネルギーを利用して水を分解し水素を製造する技術の開発も進められている。直接的な熱分解は非常な高温を必要とするが、複数の化学反応を組み合わせることによって比較的低温なプロセスで水素が得られる。そのプロセスはブンゼン反応、ヨウ化水素分解、硫酸分解で構成されるが、最も高温でエネルギーを消費する硫酸分解で、900度Cの高温が必要。熊本大学とトヨタ自動車の研究グループは太陽光の集熱光で得られる600度Cで作動する硫酸分解触媒を開発した。多孔質のバナジン酸銅触媒で、貴金属系触媒を上回る活性を示すとともに、酸性環境で強い耐食性を有する。反応プロセスの低温化によって太陽光を利用した熱化学的水素製造の実現が一歩近づく。

※ギ酸利用し効率貯蔵※
 水素の貯蔵・運搬で有望視されているのがギ酸(HCOH)だ。ギ酸は二酸化炭素(CO2)を水素化して得られるとともにエネルギー密度が比較的高く常温下での性状が液体であることから、水素貯蔵材料に向いているとされる。しかし、二酸化炭素プロセスは高温高圧条件が必要という課題がある。産業技術総合研究所は米ブルックヘブン国立研究所と二酸化炭素とギ酸を相互に変換する触媒を開発。水中で水素と二酸化炭素を効率良く反応させてギ酸を得るとともに、ギ酸を分解して一酸化炭素(CO)を含まない高圧水素を供給できる。産総研が開発してきたプロトン応答型触媒を見直し、水酸基(?OH)の近くにイリジウム(Ir)を配置することで触媒活性を高めてギ酸の反応速度を改善した。
(了)


Copyright(c)2010 The Chemical Daily Co., Ltd.