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「化学ムラ」批判を受けない対応を
原発事故を契機に「原子力ムラ」が批判されている。一方的にレッテルを張って原子力政策から排除しようとする最近の世論は、将来に禍根を残すことになりかねない。ただ、電力会社などが原発の安全性を強調する余り、的確なリスク情報の提供や安全対策を怠ったことは大きな反省点である。
化学産業は化学技術を基盤に成長を続けてきたが、電機メーカーの技術系役員なども「亀の甲が苦手」と化学を敬遠する声がある。化学品の有用性は認識されているが、使い方を誤ると健康被害を引き起こし、環境を汚染する。化学品ユーザーを含め生産拠点や物流段階における人身事故も根絶できない。
昨年後半から相次いだ工場事故は、死傷者の多いことに加えて地域住民にも甚大な被害を与えた。事故は通常運転時よりも、設備停止後の立ち上げ時などの非定常状態で発生したケースが多い。この原因に高度な技能を持った熟練技術者不足や技術伝承の課題が指摘されている。設備の高経年化による不具合も発生しやすくなっている。
技術伝承を目的にした人材育成の重要性はかねてから指摘されてきたが、必ずしも成功していないようだ。設備保全投資も削減対象とされる。供給ソースが限定されている化学品が事故を起こすと、顧客から早期の供給再開が求められ、事故原因の検証や対策を十分に行わないまま稼働再開に動き、批判を浴びる事例も伝えられている。
再発防止に向けた取り組みは当該企業のみならず、石油化学工業協会や日本化学工業協会などでも始まっている。経済産業省は高圧ガス保安法に基づく自主保安制度の見直しなど規制強化も検討している。ただ規制を強化しても事故が減少するという保証はない。まずは当該企業が事故を検証して、その情報を関連業界に広く公開し保安力の向上に生かしてほしい。
化学産業は大手だけでなく、中小企業がサプライチェーンに不可欠な化学品の生産を行っている。人材の層や財務体質を考えると、中小企業の保安力強化を業界として支援すべきだ。
化学品リスクは生産工程だけでなく、使用段階における健康被害や環境影響も存在する。この対策は化学物質の危険有害性(ハザード)情報を整備するとともに、サプライチェーンに的確な情報提供が不可欠。化学物質管理に法規制を切り離すことはできないが、事故を減らす業界の自主的取り組みと両輪で進めるべきだ。都合の悪い情報も公開して、被害を最小化する努力も重要になる。閉鎖的体質を象徴する「化学ムラ」批判を受けないために、化学業界の地道な取り組みを望みたい。