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2012年09月25日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載】元素を使いこなせ(上)

希土類削減へ多様な工夫

 今年5月、2つの元素が新たに命名された。114番元素の「フレロビウム(Fl)」と116番元素の「リバモリウム(Lv)」。すべての物質は元素の組み合わせであり、登録されているものだけでも6000万種類を超える。材料開発、エネルギーなどのイノベーションには元素の特性を追求することが不可欠。日本では希少元素の代替技術が注目されているだけでなく、既存の元素で今までにない機能が発見されて新たな材料創生に結びつく例も出てきた。(多賀恵子)

 現在、元素のなかで注目されているのが希少金属であるレアメタル。国立科学博物館では特別展「元素のふしぎ」が10月8日まで開催されており、レアメタルが一般の人にも分かりやすく展示されている。とくにジスプロシウム(Dy)、セリウム(Se)など種類のレアアース(希土類)は磁石やモーター、電池、電子機器など先端製品に欠かせない存在。産出量が少なく、ほとんどが中国に依存しており、価格の乱高下、調達不安といった問題から使用量削減、代替材料開発が加速している。

※Dyレス磁石実現へ※
 東芝はDyを一切使用しないモーター用の高鉄濃度サマリウム(Sm)・コバルト(Co)磁石を開発した。鉄の配合量を従来の15%から20ー25%に増やすとともに焼結時の温度、時間、圧力など熱処理条件を工夫。100度C以上でも耐熱型ネオジム(Nd)磁石と同等以上の磁力を実現した。2013年3月に発売を開始する予定。
 日立製作所はモーターの鉄心に低損失の鉄基アモルファス金属を採用、積層構造にして加工劣化性を抑えた。これによってフェライト磁石でも効率を高めることが可能となり、レアアースを使わない産業用11キロワットモーターを開発できた。14年度の製品化を目指す。
 磁石メーカーにとっては、Dyに依存せず従来と同等以上の機能を発現できれば競争力が高まる。信越化学工業はDyを使用しないネオジム磁石を来年から量産する予定。日立金属もDyの使用量を削減した製品を量産化、「年内には生産するネオジム磁石の約半分が省Dy型ネオジム磁石になる」(同社幹部)としており、さらなる大幅削減への取り組みも進めている。

※電池分野でLi代替※
 電池分野でもレアメタルを使用しない材料開発が進む。電気自動車などへの搭載が期待され、急速に需要が高まると予想されている高容量リチウムイオン2次電池(LiB)は、地殻中に0・002%程度しか存在しないリチウムが使用され、ほとんどを輸入に依存している。
 東京理科大学、GSユアサのグループは、Liの代わりにナトリウム(Na)を使用した新規鉄系層状酸化物を正極材料に適用、現状のリチウムイオン電池と同等のエネルギー密度を達成した。大阪府立大学の辰巳砂昌弘教授らは全固体型ナトリウム蓄電池を試作、室温でも作動することを確認している。
 産業技術総合研究所は酸化還元活性を示すキノンやインディゴといった有機系材料に着目し新規正極材料の開発を進めている。レアメタル使用の低減では元素置換などの手法があるが、炭素(C)、水素(H)などで構成される有機系材料で代替できれば資源的な制約から解放される。研究段階ではあるが、キノン類の構造を工夫することでコバルト酸リチウム(LiCoO)の2倍の放電容量が得られた。
(了)


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