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2012年08月23日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載】 4 転換期のASEAN石化産業

命運握るRAPID計画

※クラッカー建設決断※
 1面連載?マレーシア.jpg2020年の先進国入りを目指すマレーシア。「年間6%の経済成長」がナジブ首相に突きつけられた目標だ。マレーシアの経済発展は、マレー系を優遇するブミプトラ政策が根幹にある。高い利率のブミプトラ投資信託基金が設立され、中華系との経済格差の解消の本丸となってきた。同基金の投資先は国営ペトロナスなどの優良企業で、ペトロナスの発展とともにマレー系の金融資産が形成されてきた歴史がある。国の根幹を支え成長が宿命づけられているペトロナスが次の成長の一手として選択したのは、ナフサクラッカーを軸とした石油化学事業だ。
 マレーシアは自国の豊富な天然ガスを原料に石化産業の発展を遂げてきた。シェールガスなど世界で石化産業のライトフィード化に注目が集まるなか、ペトロナスは同社初となるナフサクラッカーの建設を決めた。これによって川下分野の裾野が広がる半面、隣国シンガポールなど競合国との真っ向勝負となる。なぜ敢えて「茨の道」を選択したのか。
 ナジブ首相は昨年、2011年からの次期国家5カ年計画を発表した。その骨子の1つとして、民間部門・技術革新主導型経済の創出を重点施策としている。マレーシアは世界有数の天然ガス産出国だが、40年で枯渇するともいわれており、新たな成長産業の育成が急務となっている。
 そのなかでペトロナスが着目したのは、天然ガスの受け皿の位置付けであった石化事業。BASFとのパートナー締結以降、スペシャリティケミカルを中心に石化事業の育成を加速。2000年時点で売上高全体の約2%に過ぎなかったが、その後10年で7%を占めるまで事業が拡大した。
 さらに、10年に石化子会社ペトロナス・ケミカルズ・グループ(PCG)がマレーシア証券取引所への上場を果たし、グループにとって石化事業が重要セグメントであることを明確にした。ナフサクラッカーを持つことは、中東の原油受け入れ先になることを意味する。これは中東関係強化の一環であり、中東のオイルマネーの受け皿となるイスラム金融センターに布石を打つことにもなるといえよう。

※狙いは付加価値創出※
 昨年5月、ペトロナスは石油精製・石油化学の統合プロジェクト「RAPID」を発表。東南アジア諸国連合(ASEAN)における石油製品の拡大を目指す計画だが、川下の石化事業でプロジェクト全体の付加価値を創出する狙いがある。焦点はナフサクラッカーを軸としたC2ーC5留分を利用した差別化戦略だ。
 マレーシアでは1人当たりプラスチック消費量が70キログラム前後と先進国並みに市場が成熟しつつあり、低密度ポリエチレン(LDPE)やポリプロピレン(PP)をはじめ、多くの石化製品が輸出ポジションにある。RAPIDではケルテ拠点などのガスベースの石化製品との差別化・最適化を図りながら、いかにグローバルに差別化するかが課題。マレーシアはASEAN石化産業の盟主への大きな一歩を踏み出す。
(写真=BASFとの連携強化を図るペトロナス)


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