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2012年08月22日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載】 3 転換期のASEAN石化産業

タイ 成長求め周辺国にも投資

 今年5月5日。石油化学メーカーであるバンコク・シンセティクスの合成ゴム子会社の工場で大きな爆発が発生し、11人が死亡、140人近くが負傷する大惨事となった。マプタプット一時停止問題は一段落したものの、住民は再び態度を厳しくさせている。政府は6月にマプタプット工業地区にほど近い東部チョンブリ県で閣議を開催し、公害問題や工場の事故発生時の住民避難・救援作業などを盛り込んだ5カ年計画を承認するなど神経を尖らせている。



※素材供給ニーズ高く※ それでもマプタプット工業地区は投資拡大の機運が復活しつつある。自動車など裾野産業が発達するなか、素材を供給する化学産業はますます多様な製品の供給が求められ、国を挙げて力を注ぐバイオプラスチックなどの新しい取り組みも加速している。政府は一時停止問題や相次ぐ事故を反面教師にして、化学産業を引き続き経済成長の柱の1つとして拡大させる算段だ。政府関係者は「そうしなければ周辺国に投資を奪われかねない」と危機感を募らせている。
 実際、その兆候はある。マプタプット一時停止問題の前からベトナムでの石化コンプレックス計画を打ち出しているサイアムセメントグループ(SCG)は、ベトナムより早くインドネシアに橋頭堡を築いた。チャンドラ・アスリ・ペトロケミカルへの出資参加だ。さらにSCGはインドネシアのクロールアルカリ大手サルフィンド・アディウサハの買収に名乗りを挙げた経緯もある。
 SCGが初めてのナフサクラッカーであるラヨン・オレフィンズ(ROC)を稼働させたのが1999。10年にはダウ・ケミカルとの合弁でマプタプット・オレフィンズ(MOC)も立ち上げ、ノウハウを着実に蓄積させてきた。SCGが出資したチャンドラ・アスリにはその生きた新しい血が注ぎ込まれ始めている。
 PTTもタイだけでなく周辺国での投資拡大を狙う。チャンドラ・アスリの一部株式買収に名乗りを挙げたのはSCGだけでなくPTTも同様だ。そして、傘下のPTTグローバルケミカルがマレーシア国営石油・ガス会社ペトロナスが進める石油精製・石化計画「RAPID」への参画を決めた。PTTもSCGもタイ国内外の両にらみで投資機会をうかがっている。
※研究開発強化が課題※
 生産能力では域内随一の地位を築いている両社だが、研究開発体制が整っていないことに危機感を強めるている。当面、1%に満たない売上高研究開発費比率を1%以上へ高めるのが目標だ。研究開発力を底上げするために、PTTのパイリーン社長兼CEO、SCGのカン社長兼CEOがともに口にするのは「技術力の高い日系企業との協業」。成長の源泉を投資だけでなく技術にも求め始めている。

【写真説明】 PTTはマレーシアの石油精製・石化計画「RAPID」に参画(ペトロナス、PTT、伊藤忠商事の3社首脳)


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