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2012年08月20日 前へ 前へ次へ 次へ

農業の生産性向上を支える化学産業

 欧米の農薬メーカーの業績が好調だ。このほど今年1-6月期業績が相次いで発表されたが、大手7社の売上高は、前年同期比7-20%の増収となった。通期では過去最高を記録する企業も現れそうだ。世界最大手のシンジェンタの売上高は82億6200万ドルで、日本の農薬市場の倍以上ある。利益率の指標であるEBITDAマージンも29%と高水準を維持している。
 この要因は中国や東南アジア、ラテンアメリカといった新興国での需要拡大、北米における堅調な需要と考えられる。
 加えて欧米大手農薬メーカーは世界屈指の種子メーカーでもある。例えばモンサントは、非選択性除草剤「ラウンドアップ」に耐性を持たせた作物種子をラウンドアップとセットで販売するといったビジネスモデルを確立している。
 最近は、複数の除草剤耐性や、除草剤耐性と害虫抵抗性の両方の性能を持たせた遺伝子組み換え作物も販売されており、高付加価値化も進んでいる。
 これら大手メーカーの好業績は種子事業も後押しした。北米でトウモロコシ、ブラジルで大豆作付面積が増えている。とりわけ米国はバイオ燃料に利用されることから作付けが意欲的に行われたようだ。
 だが、追い風ばかりではない。農業は自然環境に影響を受ける産業だ。ここに来て米国での干ばつが世界の穀物需給に影を落とし始めている。8月10日に米国農務省が発表した需給見通しによると、トウモロコシの主産国である米国では、コーンベルトの干ばつが7月も続き、生産量を前月予想から下方修正して6年ぶりの低水準となった。期末在庫量も年ぶりの低水準だ。大豆も南米では増産が見込まれるものの、米国は干ばつによる減産で前月予測から下方修正した。トウモロコシと大豆の価格は史上最高値を更新する勢いとなっている。価格が上昇すれば農家の作付け意欲が高まるためメーカー側には有利という考えもあるが、減産は少なからず農家経営にダメージを与えることになろう。
 デュポンの子会社で世界大手種子メーカーのパイオニアは、バイオテクノロジーを応用した品種改良によって干ばつに強いトウモロコシ種子を開発し、今年初めて米国で作付けがなされた。この種子が農家から高い評価が得られれば、今秋から作付けが始まるブラジルやアルゼンチンなど南半球でも普及が進む可能性がある。
 農業は自然との闘いという一面がある。また、2050年には世界人口が90億人に達するという試算もある。農業の生産性向上に向け、企業の多角的な研究開発に期待したい。


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