白書が示した日本経済の構造リスク
「日本経済の復興から発展的創造へ」の副題を付けた2012年版経済財政白書からは、直面している構造的課題に危機感を募らせていることを改めて感じさせる。足元の景気は緩やかに回復しているものの、デフレ脱却は道半ばである。財政リスクも深刻化し、世代間格差や負担の先送りは是正されていない。白書では「質」を重視した成長、危機に強い経済の構築を求めるが、その実現の道筋を早急に示さなくてはならない。
リーマン・ショック後の世界同時不況からようやく回復に転じた日本経済は、東日本大震災や欧州債務危機など内外の激動に翻弄されてきた。このなかで景気は、内需がけん引することで緩やかに回復しつつあるが、海外経済の減速によって外需寄与は弱いのが実態。今後、景気回復を確かなものにするには、所得・消費増加の連鎖、生産から企業収益、設備投資への連鎖が必要だが、欧州債務危機、国内の電力供給制約がリスク要因として影を落としていることを認識すべきという。
デフレ脱却の兆しはある。消費者物価の下落テンポは緩和しており、期待物価上昇率のマイナス幅も縮小している。欧州債務危機が背景にある金融資本市場の変動というリスク要因は存在するが、適切かつ果断な金融政策とともに、デフレ化しやすいわが国の経済構造を踏まえた"モノ・ヒト・カネ"を動かす政策の必要性を指摘した。
財政リスクも重くのしかかる。より大きくなった政府債務にもかかわらず、国債は円滑に消化され利回りも低位で安定しているが、いつまでもこの状況が続くという保証はない。リーマン後と震災後の財政出動によって基礎的財政収支は大幅な赤字が続いている。この原因に裁量的な減税政策と社会保障費の増加がある。歳出抑制や歳入増による財政再建、実質経済成長率の上昇を実現しないと、国際金融市場の信認を得ることはできないだろうと懸念する。
白書は「発展的創造」をキーワードに日本経済再生のシナリオを描いた。そして成長の量のみでなく、健康や安全・安心な社会の構築を通じた成長の質を重視する。財政に過度に依存できないことで「公助・共助・自助」の役わり分担、効率性と公共性の適切なバランスを指摘するが、具体的方策を提示していないのは残念だ。
震災や原発事故を契機に、危機の強い経済の構築は喫緊の課題である。代替エネルギーに対する補助金が技術選択を歪め、国民負担を大きくする可能性があると警鐘を鳴らし、効率的で柔軟な経済構造、市場の活用を求めた。日本経済再生に向けて重要な視点だろう。