【連載】ジレンマに悩む国内肥料工業(下)
需要低迷 進む業界再編持続可能なモデル構築を
※価格は高止まり・農産物転嫁できず
農林水産省の農業物価指数によると、肥料の価格指数は2005年度を100とした場合、06年度が102、07年度が107、08年度が132、09年度が148、10年度が133、11年度が133と推移した。この間、農産物総合の価格指数は96〜103で推移し、肥料の高騰分が販売価格に反映できていない。
肥料高騰の事態を受け、農水省は昨年12月の「『我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画』に関する取組方針」で、「肥料の生産・流通の構造改善を促す観点から、肥料銘柄数の削減等の効率的な生産・流通モデルの策定について、平成24年度中に調査・検討を行い、その結果を踏まえて、関係省庁・団体等と連携してその普及を推進する」と明記、肥料コスト低減に乗り出す姿勢を示した。
ただ、肥料業界からは「肥料が農業生産に占めるコストは全体の数%程度。これまでも原料部門を含めた合理化・再編、系列を越えた生産の受委託や配送拠点の再編などを通じてコスト低減を図っており、さらなる低減の余地は限定的」との声も聞かれる。
※出荷100万トン割れに・合併で生産集約
その一方で、昨今の原料高騰を受けて国内肥料出荷量は低迷を続けている。日本肥料アンモニア協会の統計によると、高度化成肥料の国内出荷数量は07肥料年度107万トン、08年度72万トン、09年度84万トン、10年度98万トンとなっている。
こうした状況の下、過去数年にわたって業界再編が進んできた。07年には日産アグリと三井東圧肥料が合併してサンアグロが誕生し、日東バイオン、アグリメイト、住商農産が合併して住商アグリビジネスが発足した。08年には三菱商事、宇部興産などの合併でエムシー・ファーティコムが誕生し、09年にはチッソ旭肥料、三菱化学アグリが合併してジェイカムアグリとなった。
さらに、エムシー・ファーティコムは11年に有機肥料の生産を神島工場(岡山県笠岡市)に集約して、サンアグロは同年、函館工場の生産を終えた。今年5月には片倉チッカリンが青森工場を閉鎖するなど生産体制の見直しが続いている。
こうした動きに加え、三井物産と住友商事は今秋、国内肥料事業を統合する。共同新設分割による新会社を今秋に設立し、両社の肥料原料輸出入事業を継承する。国内製造・販売子会社の住商アグリビジネスおよび三井物産アグロビジネスを統合新会社の完全子会社としたうえで合併する。
日本は食料の大半を輸入に頼っているが、新興国の食料需要拡大や気候変動にともなう不作の発生など食料の輸入リスクは高まりつつある。食料安全保障を実現するためにも、農業生産の基盤を担う肥料工業には持続可能なビジネスモデルの構築が求められる。
(了)