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2012年07月17日 前へ 前へ次へ 次へ

市場に対応した「ものづくり」が急務

 円高、高い法人税など製造業が抱える「六重苦」の改善は遅々として進んでいない。この厳しい環境にどう対処するか、企業としての取り組みが始まっている。一方で、ものづくり白書などで新たな取り組みの提案も相次いでいる。これまでの技術力や高品質・高機能を重視したものづくりから、成長する新興国を視野に入れて市場や顧客の求める商品・サービスの重要性が共通認識となっている。
 政府が先月発表したものづくり白書では、日本の製造業の「技術で勝って事業で負ける」に対する解答を示した。とくに新興国市場でシェアを拡大できない理由に経営戦略やグローバル人材に起因する誰のためのものづくりかの視点が欠如していたと指摘した。そして現場力という日本企業の比較優位を基礎として、"マザー機能"というコンセプトを示した。これまでのマザー工場を一歩進め、商品・サービス開発などで顧客ニーズ対応できる拠点に脱皮して、世界に展開できるビジネスモデル構築を求める。
 野村総合研究所はベテラン人材に開発、製造を依存するものづくりの限界を指摘する。今後はイノベーションの先行開発を日本に集中する一方で、製品開発を海外に移して新興国市場に合った品質基準に引き下げる。積み上がったムダを減らしながら、イノベーションの成果と市場・生産国をつなぐブリッジ機能の重要性を強調した。
 経済同友会は、これまでの製造者視点でのものづくりと対極にあるマーケット側からの"ことづくり"というコンセプトを提示している。ものづくり人材は品質・コスト・性能の完成度を高めることにこだわる傾向が強いと規定する一方で、ことづくり人材は市場を理解し、顧客経験とビジネスモデルのデザインができる能力とした。
 これらの提案で共通するのは、日本型ものづくりに変革を求めていることだ。これまでの日本のものづくりプロセスを抜本的に見直して、堅持すべきものと改革すべき点を明確にすべきとする。この変革の推進には経営トップが明確なビジョンを示し、リーダーシップを発揮すべきであろう。
 ただ、ものづくりプロセスは業種によって違う。提言でも開発機能の海外移転に関して温度差が大きい。末端商品は市場に隣接した商品・サービス開発が必要な半面、素材系や部品系事業は国内における技術開発の役わりがまだまだ大きい。事業を取り巻く環境に適切に対応した戦略が必要だ。同時に、日本のものづくりを支えてきた中小企業ほど「六重苦」の打撃が大きいという現実を踏まえた実効ある支援策を指摘しておきたい。


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