独産業の競争力を強調した通商白書
世界経済の減速だけでなく東日本大震災、原発事故、タイ洪水、円高などで輸出が減少する一方、液化天然ガス(LNG)などの輸入急増によって、2011年の日本の貿易収支(通関ベース)は31年ぶりに赤字に転落した。このまま赤字が定着するという見方は少ないが、製造業を中心に日本経済の競争力が低下していることは否定できない。12年版通商白書では、産業構造が類似するドイツの貿易黒字を分析した。
ドイツの貿易黒字を稼ぎ出しているのは機械類・輸送用機器と化学品で、一貫して出超を続けている。ただ、1990年代後半の経常収支は赤字が続き、黒字に転じたのは02年。この6年は1500億ユーロ前後を維持している。自動車など機械産業、医薬品を含めた化学製品が黒字に貢献しているが、その他の工業製品でも競争力を高め輸出を増やしている。
為替レートの影響は大きいにしても、日本の輸出価格は08年までは緩やかながら上昇を維持したが、リーマン・ショックを契機に下落に転じ、11年3月の指数は84・3(95年4月=100)に落ち込んだ。逆に輸入物価は資源価格に影響されて乱高下を続けたが、11月3月は163・6と交易条件の悪化が目立つ。同じ条件で比較したドイツは、輸出指数が119・2、輸入物価が135・8。輸入物価の上昇に合わせて輸出価格を引き上げ、交易条件は比較的安定している。
ドイツの貿易黒字が拡大している要因に、最近のユーロ安が指摘されている。しかし通商白書では、この年を振り返ると、EU域内向けと域外向けの価格はほとんど同じ水準で推移しており、為替変動に影響されにくいドイツ製品の非価格競争力の強さを指摘する。
これを可能にしているのは、高価格品の輸出と得意分野での世界市場戦略とみる。ドイツ自動車メーカーの快走が話題になっているが、白書では中国の輸入する3000CC以上のドイツ車の単価は約8万3500ドル。これに対し日本車は3万9000ドル、米国車は4万7800ドルとブランド力を武器に高価格を維持する。しかも、輸入車に占めるシェアはドイツ37%、日本22%、米国17%と圧倒している。もう一つ無視できないのは、中堅・中小企業も製品や技術を特化して、グローバル市場に展開していることだ。
経産省は目指すべき経済社会ビジョンとして、新産業創出と産業構造の転換を進め、多様な稼ぎ頭による「八ヶ岳」構造を掲げている。自動車に過度に依存する産業構造の脆弱性が懸念されるなか、ドイツの産業構造に学ぶべきと示唆している。