昭和電工市川秀夫社長 「技術優位性生かす」
「第6世代好調持続電極=買収で中国に基盤」
ハードディスク(HD)と人造黒鉛電極を成長ドライバーに、レアアース(希土類)合金なども育成中の昭和電工。世界経済には不透明感が強まるが、市川秀夫社長は「技術の優位性をベースに、M&A(合併・買収)や提携も駆使して世界シェアのさらなる拡大を狙う」と檄を飛ばす。
※「底深い」世界経済※
△世界経済の先行きをどうみますか。
昨年月の予算編成時と比べてマクロ経済に対する認識は少し変わった。欧州経済は相当重苦しい状況で、米国もここにきて減速してきた。中国も思いのほか欧州の影響を受けている。予想していたより底が深い。ただ、少なくとも私が社長の間は、縮小とか守りだけで固める発想はない。世界がグローバル化するなかで、規模を維持するためにも成長が必要だ。2020年に売上高1兆円、営業利益率8%を実現するにはどのような方策が必要か。将来のあるべき姿と現状とのギャップを埋める発想で、もう一度設計し直す。
※想定以上の競争力※
△主力事業の収益環境は。
足元ではHDが一本足で会社を支えている状態だ。想定以上に競争力がついており、好調を継続している。世界初となる垂直磁気記録方式の第6世代は、記録密度が物理的な限界に近く量産が難しい製品。積み上げてきた技術力が市場で優位性を発揮している。
人造黒鉛電極は少し回復が遅れている。7割が輸出なので為替の影響を受けている。こうしたなかで中国の中鋼集団四川炭素を実質的に買収することで合意できた。年末には契約締結する予定で、その頃には市場も回復しているだろう。インドでの事業展開も検討している。現地に大手メーカーが存在するので提携を軸に考えたい。
△四川炭素の買収合意の背景は。
技術力が評価されたからだ。厳しい交渉だったが、当社技術の導入を条件にマジョリティーを取ることで合意した。中国メーカーも3?5年のうちにはUHP(ウルトラハイパワー)の大口径電極の生産を始めるだろう。その技術を早めに入れて、さらにその先の技術を開発していく。
※新事業モデル模索※
△中国のレアアース事業の対応は。
金融引き締めにより中国のエアコン需要が停滞するなど、想定以上に需要の落ち込みが長引いている。これまで中国に立地して安定供給に努めてきたが、この仕組みだけでは長続きしない。調達先の多角化に加え現地の磁石メーカーとの提携あるいは日本の磁石メーカーの中国進出に合わせた協業でダウンストリームに出るなど、新たな事業モデルを模索中だ。ベトナムのリサイクル拠点を活用しながら次のチャンスを待つる
△石油化学の構造改革の方向性は。
7〜8年周期の市況変動時代とは異なる構造要因が出てきた。中東、中国の石化産業の巨大化やシェールガスの台頭などだ。シェールガスは現在、原油の5分の1程度の価格であり、世界の市況構造を底流で変えるインパクトがある。こうした構造変化を考えると、大分の70万トンのナフサクラッカーありきということが妥当か、判断を迫られるかもしれない。ではどうするのかというと、一定の時間軸のなかでの最終的な答えはまだ提示できていない。
(聞き手=佐藤豊)