【連載】材料新進化論 医療分野でポリマー活躍(5)
「ステント、人工関節などに」
体内に埋め込んだり挿入したりするステントや人工関節などの医療器具・材料にとって、生体適合性や耐久性は欠かせない課題だ。生体に拒否反応を示さないのはもちろんのこと、治療器具によっては生体内で自然に分解されるという耐久性と相反する特性も求められるようになってきた。
※生体吸収型を実現※
心臓に血液を送る冠動脈の血管を拡張する医療器具がステント。心筋梗塞治療のため、血管に生涯留置する。現状、市販品の大半は金属製で、異物と認識した体は免疫反応を起こす。免疫抑制剤を塗ったステントが登場したが、血管内膜が厚くなり再び血管を詰まらせる場合があり、安全性の課題がつきまとっている。
そこで注目されているのが体内で吸収分解される生体吸収型ステント。世界の医療機器メーカーが開発競争を繰り広げるなか、先頭を走るのがベンチャー企業の京都医療設計(京都市)。開発中の「イガキ・タマイステント」の素材はポリ乳酸(PLA)で、糸から紡ぎあわせて強度が増すように作った。
このステントは再狭窄予防に必要な半年間はしっかり血管を支え、2〜3年後には完全に消失する。同社によると「血管内に異物が残らず、治癒後、自然な血管機能の回復の可能性が見込まれる」という。昨年、欧州で臨床試験を開始、実用化に近づいている。
※耐摩耗性も優れる※
体内に埋め込む人工関節など医療材料は、細胞組織との接触部分に生体適合性を持たせるだけでなく、摩耗に耐える強靱性が求められる。
昨年、世界で初めて生体親和性ポリマーを表面に結合した人工股関節「アクアラライナー」の国内販売が始まった。京セラの医療機器関連社である日本メディカルマテリアル(大阪市)と東京大学が共同開発した。
ヒトの細胞膜成分と同じ構造のポリマー「ジ-メタクリロイルオキシエチル ホスホリルコリン(MPC)」を関節軟骨の役割を果たすライナーにグラフト重合。独自のコーティング技術で関節軟骨と同様の表面構造に加工し高い親水性、潤滑性、生体適合性を持たせた。人工股関節のゆるみにつながる摩耗粉の発生を従来品に比べて約99%抑えられるのが特徴。
※複合素材で強靭に※
ナカシマメディカル(岡山市)は信州大学などと共同で複合素材を使った人工関節を開発した。人工関節は摺動面で使用するポリエチレン(PE)やセラミックスが摩耗したり破損したりすると再手術が必要になる。そこでPEにカーボンナノチューブ(CNT)を複合、表面には界面活性剤技術を使いアルミナセラミックスを結合させた。これまでの実験で優れた耐衝撃性が得られており、2017年の実用化を目指して治験を進めていく。
医療器具・材料はまったく新しい製品は生まれにくいものの、改善・改良は絶えず行われ、医療に一層貢献できるものへと磨き上げられる。高齢化の進展で医療需要はますます拡大する見通しにあり、素材メーカーが果たす役割は一段と増している。