ハードル上がる医薬品創製の課題
製薬産業は景気変動にあまり左右されずに安定成長を続けてきた。知識集約型で高い付加価値を生み出すことから、日本の成長牽引産業としても期待が高まっている。しかし製薬産業は今、非常に難しい時代を迎えている。医療用医薬品が拠って立つ公的医療保険制度の財政状況が厳しさを増しており、薬剤費に対する抑制圧力が一段と強まる可能性があるためだ。
医療費、薬剤費の抑制が世界的な潮流になるなか、日本の医薬品市場に対する外資系企業の評価が高まっている。薬価基準制度の運用に不確実性が少なく、一定要件を満たす新薬の薬価改定猶予制度が施行導入されているためだが、見方を変えれば日本は甘いのだろう。韓国では保険収載医薬品の約半数で%以上も薬価を引き下げることを政府が先頃発表している。
日本では医療保険が適用される医薬品の範囲と価格は、薬価基準によって定められている。新薬の価格は米国と比べると低いが、特許が切れて後発医薬品が出ても市場シェアが急激に落ち込むことはなく、長期収載品(後発品のある先発品)に根強い需要があるのが日本の特徴となっている。
しかし近年の薬価制度改革は、画期的な新薬の価値は評価する一方で、特許が切れれば後発薬への切り替えを促す方向が鮮明になっている。長期収載品のシェアは縮小し、海外のように新薬と後発薬とに大別される市場構造へと変わっていくことは間違いない。
新薬メーカーが成長していくためには、世界に通用するような新薬を継続的に生み出していくしかないが、新薬の創製は年々困難になっている。医薬品は何十年にもわたって使われるものが多く、新陳代謝が少ない。累積していく既存薬との差別化を図っていくことは至難の業であり、治療法のない希少疾患、薬剤はあっても医療ニーズが十分に満たされていない疾患へと新薬開発のターゲットが移っていることには必然性がある。
2014年度の診療報酬改定に向けて、革新的な医薬品の保険適用の評価に費用対効果の観点を導入するための検討が、中央社会保険医療協議会の場で始まる。英国では新しい医療技術や医薬品を国家医療サービス制度で提供するかどうかを、国立医療技術評価機構(NICE)が経済的な視点から評価している。こうした海外の事例も参考にされるようである。
費用対効果に優れる新薬を創製するためには、開発成功確率をいかに高めていくかが重要な課題となる。ゲノム情報やバイオマーカーの活用など、より高度な研究開発が求められる時代が到来している。