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2012年04月09日 前へ 前へ次へ 次へ

東日本大震災【連載】逆境を新たな糧に

 東日本大震災は産業界に多くの試練を与えた。緊急時対応、サプライチェーン寸断、原発事故にともなう電力制限。さまざまな問題が突きつけられ、国内のモノづくりは大きな岐路に立たされている。しかし、そうした教訓を生かすことで、より強く逞しくなるはずだ。震災から1年余り。化学および周辺業界の動向を追った。

災害により強く 三菱化学・鹿島
潜在リスク洗い出し対策

※生産設備ほぼ無傷※
 3月11日午後2時46分・震度5強、3時15分・震度6弱。三菱化学を中心とする鹿島コンビナートに2つの地震が襲いかかった。ユーティリティー設備は自動停止、各社の生産設備は安全に止まった。津波は鹿島港入り口付近で波高5メートルだったが、Y字型に伸びる航路は狭いために一番奥の南公共ふ頭では8メートル超に達した。航路に入っていた石炭船は制御不能となって両岸に繰り返し衝突した。
 主な被害は港入り口部の海水取水場、西部地区の3カ所で、生産設備はほとんど無傷。海水取水場はポンプ室周辺の地盤が陥没しモーターが浸水した。南バースでは7号バースが陥没し、複数のローディングアームが変形した。神の池(ごうのいけ)を埋め立てた西部地区は液状化現象が発生。埋設配管が使用不能になり、酸化エチレン(EO)ユーザーに原料供給ができなくなった。

※迅速に生産を再開※
 三菱化学・鹿島事業所は2007年にエチレン設備の火災事故を経験していることもあり、もともと防災意識が高い。コンビナート各社および行政と日頃から緊密な連携を取っていたことが迅速な対応につながった。
 まず行ったのはプラント内の仕掛かり品の除去。保安用電力は11日に東京電力から供給を受けており、31日には自家発電設備の稼働を再開し、電力、蒸気とも不安がなくなった。
 設備の状況が把握できると、迅速な生産再開が課題となる。「すべてを一気に再開するのではなく、設備の半分を立ち上げることで時期を早める」(鹿島事業所長の梶原康裕常務執行役員)方針を取って、2基あるエチレン装置のうち第2装置の復旧に経営資源を集中的に配分した。3月末までには日程を決めており、生産を再開した5月20日にはマスコミ関係者を現地に招いている。
 11年は定修年で、第2装置は高圧ガス保安法など関係法規が許す範囲内で2カ月延長し8月末まで稼働させた。第1装置は予定通り5月初めに定修入りし、6月30日に生産再開。サプライチェーンへの影響を最小限に抑え、短期間で復旧を果たしたことは業界でも驚きを持って迎えられた。

※知見をグループに※
 「鹿島事業所は絶対に残らなくてはならない石化拠点」(同)。そのためには安全文化醸成が欠かせないと強調する。今回の地震・津波被害を教訓に、自然災害やプラントトラブルに強い事業所を目指す取り組みを強めている。今回、顕在化したリスクだけでなく、潜在リスクも洗い出して対策を検討。数十年に1度の地震と、1000年に1度の地震の両ケースを想定している。同事業所は耐震強度を求められなかった71年に完成しているが、「今回、震度6強ならびくともしないことが確認できた」(同)ことから、設備面では国内トップクラスの競争力があると自信を深める結果となった。今後は津波対策や工業用水確保などをテーマとした官民協同の検討を進めるとともに、蓄積した知見を三菱化学グループへ横展開、さらに社外公開も考えている。


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