日本の遺伝子技術で熱帯林の再生を
国際農林水産業研究センター(JIRCAS)が国営マレーシア森林研究所と共同で、熱帯雨林の健全な世代交代のための種子生産の条件を遺伝子レベルで解明した。花粉の散布距離、幹の直径、花粉生産量など特性を明らかにした。遺伝子解析技術を生かした地道な研究活動だが、解析結果から得た情報をもとに、新たな伐採指針を提案している。南洋材ラワン林業の持続可能な成長にバイオ技術が貢献し得る事例になることを期待したい。
今回、調べたのは有用林業樹種のフタバガキ科セラヤ。木材として知られるラワン材はこのフタバガキの総称。主な用途は構造用やコンクリート型枠用合板。森林・林業白書によれば、南洋材の輸出は1960年代以降盛んになり、わが国は世界最大の輸入国となった。ただ10年ほど前に比べると、マレーシアからの南洋材の合板輸入は減少している。過去数十年にわたり、日本の需要を満たすため収穫され、不健全となった森林を回復させることは、現地と協力しながら取り組まなければならない課題ともいえる。
共同研究グループは、マレーシアのセマンコック試験地で1998年と2005年に大規模な一斉開花と02年の小規模一斉開花時に約1500個の種子を採集し、その親子関係を調査した。花粉親と種子を採集した木の距離が花粉散布距離として、遺伝子解析を実施し、今回、新たなデータを取得できた。
遺伝子解析結果によると、散布距離の平均距離は約60メートルと非常に短いことが判明。各花粉親の幹径と、花粉親として生産できた花粉の量との関係を調べると、幹の直径が一定以上の樹木だけを伐採する「択伐」後に残される直径センチ以下の小径木はほとんど花粉を生産していないこともわかった。その結果、幹径70-90センチの個体を残すと効率よく他殖(他の木の花粉が昆虫によって運ばれ受粉し生殖すること)を維持できることが推定され、JIRCASではこれを伐採指針として提案している。
マレーシアの林業は択伐という方法が行われ、幹が直径50センチ以上の個体を伐採し木材を収穫する。しかし同手法はフタバガキの密度が低下、次世代の森をつくる健全な苗が育ちにくい。科学的根拠に基づく、伐採のための新たな管理手法の必要性が求められている。択伐の方式改善は、熱帯林の再生技術として林業の持続性を保ち、健全な森林づくりに有効となろう。また、途上国の森林減少や森林劣化による温室効果ガス排出削減や森林の保全などを加えた「REDDプラス」の重要性も指摘されている。熱帯林における資源回復技術の果たす意義は大きい。