透明性を重視した工業用水政策を
生産活動を支える工業用水道施設の老朽化が進んでいる。大規模な漏水事故が急増しているほか、東日本大震災では各地で被災して施設の更新や耐震化投資が迫られている。化学産業は工業用水の32%を使用する最大のユーザー業界であり、かねてから契約方式や価格メカニズムが不透明という不満を示していた。厳しい国際競争に晒されている製造業の現状を認識して、今後の工業用水政策の方向を示すべきである。
戦後経済の発展を引っ張った素材産業に安定的に工業用水を供給するため工業用水法が制定されたのは1956年。これを契機に工業用水道施設の整備が始まり、現在は全国に約150の工業用水道事業者がある。ほとんどが地方公共団体だが、大半の施設は40-50年を経過、老朽化など課題が山積している。
老朽化による漏水事故は日常的に発生しているが、東日本大震災では工業用水道施設だけでも総額億円の被害が発生、このまま老朽設備を放置すると、産業インフラとしての使命を果たせないと危機感も高まっている。ただ設備更新や耐震化投資を実施するには、4300億円の財源が今後50年間に不足するという試算がでている。
工業用水を所管する経産省は、今年2月産構審の工業用水道政策小委員会を開催、現状の工業用水を取り巻く環境に対処するため行政、事業者、受水企業の果たすべき役割の議論を始めた。その後、アンケート調査を行うとともに来週の第2回議論に基づいて4月上旬に最終とりまとめを予定している。
経産省が示しているのは、更新財源を確保するため受水企業に立方?あたり平均1・5円、6・2%の値上げを要請する。一方で、使用量に関係なく料金が決まる硬直的な責任水量制度を改善する。また、国庫補助制度の見直しも行う。
企業は工業用水を契約する際、安全優先で過大になりがちだった。その後コストダウンの一環に節水を進めたが、現状の責任水量制ではその努力が報われない。日本の工業用水の平均料金は22・6円で、韓国を除くとアジアでは割高とは言えない。ただ、原水の水質に影響されることから2円台から100円程度と地域差が大きいとされ、そのコスト内訳が示されていない。事業者間の連携も希薄だ。
化学業界は鉄鋼、紙パルプなどとともに工業用水を大量に使用しているが、素材産業の国内生産がこれ以上増えることは考えにくい。ユーザー産業の置かれている立場や先行きを考えて、総括原価方式に基づく価格体系を見直す必要がある。行政や供給事業者の意識改革、合理化努力も問われている。