科学技術イノベーション整備を急げ
科学技術政策は新成長戦略の重要な推進役となるが、その新しい推進体制への関心が高まっている。これまでの総合科学技術会議を改組して、新たに「科学技術イノベーション戦略本部」を創設する。イノベーションを国家戦略として位置付けるのが骨子だが、戦略本部にあらゆる機能が一元化され司令塔としての動きができるかが大きな焦点になる。
2011年度から5年間の第4期科学技術基本計画がスタートしたが、ここでは従来の科学技術政策から、科学技術イノベーション政策への転換が打ち出された。この5年間にGDP比1%に相当する25兆円を投じる計画だ。これに伴い、イノベーションを国家戦略として推進することを鮮明にした。
この基本方針に基づいて昨年末、科学技術イノベーション戦略本部を発足させる報告書がまとまった。科学技術と、その成果を日本の持続的成長につなげるイノベーション創出の一体的推進のため、同本部の司令塔機能強化を図る狙いがある。
12年度の科学技術関連政府予算は、3兆6695億円。震災復興関連が含まれるとはいえ、前年度より増加、予算規模としては大きい。それだけに、日本再生を担う期待感は強い。
しかし、これまでの総合科学技術会議を通じた科学技術の振興策については、省庁の縦割りの弊害や研究開発成果の評価のあいまいさなど、いくつかの問題点が指摘されながら、解決への方向性が示されないままになっていたのが実情だ。
加えて、今年1月には総合科学技術会議の有識者議員数が法定数を満たせず、一時休止に陥るという異例の事態に陥った。3月初めに正常化されるまで、日本の科学技術政策は不在だったことになる。
今回のイノベーション戦略本部創設に当たっては、これまでの問題点を検証・分析するなかで、国家戦略としてのイノベーション創出を明確に位置づける必要がある。そのためにも、まず国家戦略会議との連携を密にしなければならない。戦略本部を担当する大臣が、戦略会議のメンバーの一人として機能することが重要になる。
また、戦略本部には科学技術イノベーション政策の基本方針を関係省庁の施策に確実に反映させるための法的権限が不可欠となる。総合科学技術会議の設置法の改正とともに、戦略本部による各省庁への勧告権限なども必要になる。予算配分に当たっても、総合調整についての司令塔の役割は明確にすることが重要だろう。科学技術の"失われた20年"を取り戻すには、戦略本部の果たすべき責務が大きいことを認識すべきである。