タイは洪水原因を分析し治水対策を
タイに再び雨季が近づいてきた。例年、4月中旬から10月までが雨季の季節となる。昨年はタイ政府の不手際もあって、大洪水への対応に混乱を招き、深刻な被害を引き起こした。同じ失敗を繰り返さない治水対策を講じ、世界の信頼回復を急ぐことを望みたい。
日本貿易振興機構(JETRO)の調べによると、洪水が発生した7工業団地のなかで約450社の日系企業が被災、一部浸水した工業団地でも20社が被害を受けた。このほか、警戒を要する工業団地や工業団地の外で操業している日系企業も含めると、多くの企業が何らかの影響を受けた。
洪水発生直後、工場の1階が水没し、2階から出入りする場面がテレビで連日のように放映され、もはやタイで操業を続ける日系企業はなくなるのではないかとさえ思われる状況だった。だが、JETROの調査では、直接被災した企業50社のうち、8割弱が同じ場所で事業を継続すると回答した。このなかには資金力がなく、移転が困難な企業も多数含まれているようだが、3月中には半分以上が操業を再開する見通しという。現状では再開のメドが立たない企業が1割ほどあるものの、再開を断念して撤退する企業は少ない。工場によっては、現地従業員たちが夜を徹して土のうを組んだという話もあり、そうしたことも事業継続につながっているのだろう。
洪水にもかかわらず、タイへの投資も衰えていない。タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は建物に浸水せず、2月は日本から3社が拠点を開設している。3月以降も空室待ちの日系企業がいくつかあるそうだ。
一方、タイ国投資委員会(BOI)は、洪水被害を受けた企業に対する法人税の免税措置の期間延長などいくつかの施策を打ち出した。タイ政府は引き続き、洪水で被災した外国企業をタイに引き留めるための努力を続ける必要があり、3月に訪日するインラック首相の言動を注目したい。
しかし、さまざまな課題も残されている。例えば損害保険に関して厳しい状況が起こっている。被災した企業が同様の損害保険への加入が認められなかったり、被害を免れた企業が損害保険に加入を認められても、補償額を減額して提示されるケースが発生している。また、タイ政府は昨年11月、被災企業に対して労働者手当の支給を決めたが、その手続きが滞り、支払いが遅れているという。
昨年の洪水被害は、政府の放水判断ミスなど人災という指摘も多い。「決」の語源は堤を切って川の水を導く。今年は適切な治水対策の決断を期待したい。