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2012年02月23日 前へ 前へ次へ 次へ

安全性の評価科学に必要な省庁連携

 食の安全性を確保するため、農林水産省によるレギュラトリーサイエンス(安全性の評価科学)技術開発事業の2012年度課題に対する公募が2月中旬に締め切られ、選定作業が始まっている。科学的知見と規制や行政措置の橋渡しとなる科学として、重要な取り組みであり、方向性は間違っていない。ただ事業が開始された10年度以降の公募課題をみる限り、農林水産研究をあまねくカバーしてバランスのよい課題設定になっているとは言い難い。限られた予算のなかで食品衛生のリスク管理に軸足を置き、川上の農水産物、畜産物などから川中・川下の加工食品、流通販売までのサイクルに対応したパッケージ型として利用できる有用技術に仕上げることが求められる。3月下旬には12年度課題に採択される見通しだが、実効性のある研究成果を望みたい。
 レギュラトリーサイエンスの強化は、10年3月に策定された農林水産研究基本計画のなかに盛り込まれ、その前から行われていたリスク管理関連研究分野などの事業が継続して対象領域になった。課題は食品安全、動物衛生および植物防疫と広範囲にわたり、12年度公募7課題含めると、10年度からの継続分と合わせて合計26課題となった。研究期間は2-3年間だ。
 11年9月に日本学術会議がまとめた提言書では、欧米で安全行政を支えるレギュラトリーサイエンスとして定着していることを指摘。日本の食品安全分野においても、カテゴリーを確立することが有効であると強調した。事実を探究したり、仮説を実証する基礎的な科学研究とは異なるが、科学技術の進歩によってもたらせる成果を真に国民の利益にかなうように調整する科学と認識されている。
 農水産省の技術開発事業の個々の研究課題には、実施の意義のあるテーマも多い。しかし早期実用化技術開発が目的としているだけにすべてがふさわしいかといえば、疑問は残る。国全体で優先すべきリスク管理課題を選ぶ仕組みがないことも改善すべき点である。
 産業界では熾烈な競争に打ち勝つため、研究開発面で自らの得意分野を補完し得る外部とのアライアンスを行うケースが大幅に増えている。これに倣い、早期に目標の技術開発を実現するのであれば、内閣府、厚労省、文科省、経産省ならびにその関連研究機関と連携を密にして基礎、評価、実用化研究を進める必要がある。異業種の技術応用や海外で開発された技術との組み合わせなど選択肢を広げることで科学的知見に基づくリスク管理システムを確立し、国民の食の安全に貢献するよう努めるべきであろう。


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