投資決断が迫られる燃料電池車戦略
次世代自動車として注目されて久しい燃料電池車(FCV)だが、2015年の市場導入に向け正念場を迎えている。課題となるのは燃料電池システムの技術開発を通じた性能向上とコストダウン、そして燃料の水素供給網の整備だ。15年販売から逆算すると、企業は12年度中に投資判断が迫られる。技術開発はもちろんだが、高圧ガス保安法など規制見直しを早期に実行する必要がある。
昨年1月に自動車3社とエネルギー事業者10社は、FCVの国内市場導入と水素供給インフラ整備に向けて共同声明を発表した。15年までに4大都市圏を中心に100カ所程度の水素ステーションを先行整備することにし、政府も積極的支援を打ち出した。
FCVの開発はトヨタ、日産、ホンダが進めている。既存のガソリン車に比較して1次エネルギー投入量は3分の1、CO2排出量は半分に削減可能で、騒音や大気汚染物質などの低減も見込める。地球温暖化対策からは電気自動車と並んで切り札的存在だ。ただ、水素供給を先行して整備することが普及の条件になり、大きなハードルになってきた。
現在の技術水準でFCVの航続距離は実用レベルの500キロを実現、車体価格は数百万円、15年までには耐久性などもクリアできるメドが立ち、性能は急速に向上している。一方、現状の水素ステーション建設コストは、15年目標の3-4億円に対し2倍程度、水素供給コストは立方メートルあたり90円の目標から30%以上割高といわれる。この低コスト化は水素製造・輸送・貯蔵・充てんまでサプライチェーンの技術革新が必要になる。またFCVの航続距離延長に不可欠な水素搭載量70メガパスカル(MPa)の早期実現への期待は大きい。これらの課題は、高圧ガス保安法、消防法などの規制緩和が必要になる。
政府は15年を普及開始初年度として、25年までの10年間にFCV200万台、水素ステーション1000カ所を目指す。自動車各社はエコカーの開発、普及を経営の最重点課題に位置付けている。ただ現状はプラグインハイブリッド車、電気自動車が先行し、FCVに対する期待は後退しているようだ。
FCV燃料は製鉄所、石油精製・石油化学工場から発生する副生水素から確保することになりそうだが、将来は太陽光を使って水を電気分解することで、究極のエコカーにつながる可能性を秘めている。自動車産業の成長戦略としても、高度な摺り合わせ型のFCVは日本の技術力が発揮できるだろう。FCV普及の長期戦略を視野に入れた政策の具体化が急がれる。