逆風下の造船各社は事業構造変革を
造船各社をめぐる事業環境が厳しさを増している。先月末にJFEホールディングスとIHIが、それぞれの造船子会社について経営統合すると発表。統合自体は4年前に決まっており、既定路線ではあるものの、予想外の出来事に業界全体が揺れた。新造船市場の縮小、中国や韓国勢の台頭、超円高という3重苦が業界全体に重くのしかかるなか、各社では事業構造の変革を迫られている。
新興国経済の発展にともない新造船需要は、中長期的にみて右肩上がりで伸びることは間違いない。しかし、中国や韓国が建造能力を増強し、新造船市場の先食いをしたことで、供給過剰が進み需給ギャップが拡大した。このギャップは今後、3-5年解消が難しいという点で関係者の認識は一致している。この結果、さらなる安値受注を繰り広げる公算が大きい。これに加え、昨年来の1ドル=70円台という超円高のため「仮に受注しても利益がでない」と造船会社の幹部は嘆く。
なかでも今回の経営統合を決定づけたのは受注残の問題だ。現在、大手各社では約2年の受注残を抱えている。しかし、船の建造には2年ほど必要なため、新規受注が止まると、2年後に各社の造船所は不良資産と化す。つまり今が造船会社にとって事業構造を変革できる最後のタイミングといえる。これが各社の背中を押した格好だ。
経営統合を発表したユニバーサル造船、アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド(IHIMU)は、10月の統合新会社の設立に向け本格的な交渉に入る。ユニバーサル造船は日本最大級のドッグをもち、新造商船の企画・マーケティング力や次世代の省エネ・環境対応船で優れた開発力をもつ。IHIMUは大型船、フェリー、海洋構造物など多様な品揃えが強み。両社は船種を併せ商品ラインアップ拡充、生産性向上、規模拡大、調達力の強化を図り、シナジー効果を最大限に引き出す。
その一方、他社の動きも活発だ。三菱重工業は船舶事業の成長戦略として高付加価値製品への特化、特許など保有技術を国内外へ供与するエンジニアリング事業を強化する。1月には船舶・海洋事業本部内に「エンジニアリング事業推進室」を設置し、独自の差別化技術で受注確保を狙う。
川崎重工業は中国の合弁造船所のNACKSで一般汎用船を建造し、国内では水素運搬船や深海資源探査船など高付加価値船でプレゼンスを高める。
造船会社では、これまで何度も造船不況を乗り越えてきた。今回の超円高などの逆風を機に、時代のニーズに合った構造変革を急ぐべきだ。