日本市場と顧客を重視する欧米化学
オランダのDSMは神奈川県にエンジニアリングプラスチックの研究開発拠点である「ジャパン テクニカル センター」(仮称)を新設する。2013年の完成を予定している。
DSMはニュートリションや食品関連材料、医薬品関連などのライフサイエンスと、エンジニアリングプラスチックや高機能材料などのマテリアルサイエンスを主力事業とする。エンプラは今後の成長に向けて重要な事業の1つである。
ジャパン テクニカル センターの新設は、グローバルにエンプラ事業を展開するうえで、日本における活動が不可欠であることを示している。自動車や電気・電子などの顧客との関係をより一層、強固にできることが期待される。
DSMは02年に創業100周年を迎えた。1902年、国営の石炭会社としてスタートしたが、これまで事業内容や企業体質を大きく変えてきた。10年に約15年にわたる構造転換を終え、ライフサイエンスとマテリアルサイエンスの両事業を基盤にした成長戦略を鮮明にして推進している。
100年を超える歴史を持つものの、日本における事業活動はそれほど長くはない。ロシュから買収したビタミンは日本でも伝統を誇る事業だが、日本法人のディー・エス・エム ジャパンの発足は90年5月。他の欧州化学企業に比べても、日本進出は決して早くはなかった。
しかし日本には着実に根ざしている。しかもライフサイエンスとマテリアルサイエンスが事業の両輪であるため、DSMにとって日本市場と日本の顧客は重要だ。ジャパン テクニカル センターを新設することによって、これからさらに日本における事業を拡大し、日本の顧客とともに歩む姿勢をより明確にすることになる。
日本に着目して事業を展開する欧米の化学企業は多い。BASFは横浜市のジャーマンインダストリーパーク内に今後の技術革新を担う施設を置く。独メルクは発光ダイオード用蛍光体に関するラボを厚木事業所(神奈川県愛川町)内に開設、活動を始めている。日本企業との多様なパートナーシップを築いてきたダウ・ケミカル、日本企業との共同開発を成長の基軸にするデュポンなど、米国企業の活動も幅広い。
こうした動きはほんの一例であり、欧米化学企業の目は中国などの成長市場にだけ向いているのではないとの証左でもある。中国における成長はもちろん大切だが、"ジャパン パッシング"では成長の機会を失するはずだ。日本への関心を高める海外企業は、これからも増えていくに違いない。