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2012年01月24日 前へ 前へ次へ 次へ

課題山積だが挑戦すべきCCS技術

 原子力発電に対する信頼低下が深刻になるなかで、天然ガスを含めた化石資源依存が高まることは避けられない。これによって多くの問題が発生するが、その一つにCO2排出量の増加がある。火力発電所や製鉄所などから発生するCO2を分離・回収して地中や海洋へ貯留するCCS技術が世界的に注目され、実証実験も始まっている。一方で技術開発のハードルも高いうえ、社会的合意形成という難題も抱えている。しかし地球温暖化対策としてCCSを無視できない現実を考えると、国際的連携を重視して技術開発を進めることが迫られる。
 2010年の日本の温室効果ガスの総排出量は12億5600万トン、京都議定書の基準年である90年比では0・4%の減少となった。これに森林吸収対策や排出枠購入などで08-10年の3カ年の排出量は基準年比10・9%減になる。12年までに90年比6%減という日本の排出目標は達成できそうな数値だが、原発事故で不透明になっている。
 世界に目を転じると、人口増加や経済発展でエネルギー消費量は右肩上がりで、必然的にCO2排出量も増える。現在の共通認識はCO2濃度450ppm、気温上昇を2度Cに抑えることになっているが、達成は容易ではない。
 このなかでCCSは有効な温暖化対策になると期待されてきた。地球環境産業技術研究機構(RITE)は03年から05年にかけて新潟・長岡市で約1万トンのCO2を地下の帯水層に注入、その挙動などを観測した。実験途中に起きた中越地震に対しても安全性を確認している。RITEではCO2の分離を行うアミン系の化学吸収液のほか、膜分離技術の開発にも乗り出している。ただ、技術開発は諸についたばかりで、12年度からは北海道苫小牧沖の海底で大規模実証実験を開始する予定。さらにフルスケールの実証実験に移行できるのは20年以降と息の長いプロジェクトだ。
 CCSの技術開発は欧米が先行してきたが、欧州では計画中止が相次いでいる。温暖化対策の資金になるはずの炭素価格の急落によって、CCSの技術開発費用を確保できないうえ、昨今の財政危機も影響している。英国のように電力会社にCCS導入を義務付けない限り開発は進まないとされる。それ以上にCCSの安全性に対する不安が増し、原発の二の舞になるという悲観論さえ出ている。
 日本の場合は地質が複雑であり、技術開発と並行して貯留層のリスク分析が求められる。ただ、エネルギー問題や地球温暖化対策に万能な解決策がないなかで、CCS技術開発に正面から向かい合う必要があろう。


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