社会インフラ輸出で浮び上がる課題
日本の成長戦略としてパッケージ型社会インフラ設備の輸出が期待されている。政府も積極的支援を打ち出したが、設備の設計・建設から維持・管理まで含めた統合的システム受注を展開するには課題も多い。利益の大きい運営・管理・保守をいかに展開するか、その戦略があらためて問われている。
社会インフラ設備は上下水道など水ビジネス、新幹線を含めた都市交通、原子力や高効率石炭発電、さらには太陽光発電など再生可能エネルギー、スマートコミュニティなど新規分野まで多岐にわたる。話題になる世界の水ビジネス市場は、2007年の36兆円から25年には87兆円まで成長するとされる。
日本企業の水ビジネスは部品・部材を中心に競争力を確保しているものの運営・管理などに踏み込んだ海外展開は皆無に近い。原子力発電や新幹線も技術力は高いとされているが、運営・管理を手掛ける電力会社や鉄道会社は典型的な内需型企業で、これまでは海外にほとんど関心を示さなかった。政府の新成長戦略でインフラ輸出の重要性が指摘されたことを契機に前向きな姿勢に転換したが、原発事故で見直しを迫られている。
国際協力銀行(JBIC)は毎年、製造業企業を対象に海外事業展開に関するアンケート調査を行っているが、今回はインフラの海外展開も調べた。回答企業(603社)には医薬品、食料品、繊維などインフラ事業と縁のない企業も含まれ参入の意思がまったくないとする約半数の企業を除くと、6割以上の企業はビジネスチャンスと判断する。関心の高い事業は太陽光発電、下水、スマートグリッド、高速鉄道、上水、都市鉄道などの順だ。プラスチック製品を含む化学企業はいずれにも興味を示し、電機産業とともに大きな期待を寄せている。一方、参入企業(126社)を対象にした中期的な事業範囲に関しては、上下水道、高効率石炭火力を除くと、サプライチェーンの川上に位置する部材や機器が主要ターゲットである。
調査対象が製造業ということを差し引いても、成長戦略に取り上げる社会インフラ事業の課題が浮き彫りになったといえそうだ。摺り合わせ型、モジュラー型の違いはあるが、日本の部材や部品産業が競争力を高めたのは自動車や電機など有力顧客の存在が無視できないだろう。このような強力な顧客企業が社会インフラ事業では少ないことは国際競争でハンディとなろう。社会インフラ事業はモジュラー型が多く、コスト競争力が問われるだけに標準化戦略の重要性も高まる。ファイナンスなども含めて幅広い産官の連携なしにはビジネスは広がらない。