新薬創出の薬価制度継続を追い風に
来年4月の診療報酬改定で、薬剤費は5000億円規模で圧縮される方向となった。薬価ベースでマイナス6・0%程度となり、2010年4月の前回改定より0・25%マイナス幅が広がる。医療費膨張抑制のしわ寄せを医薬品が受けるのは過去の通例だが、基本的に薬価と市場実勢価格との開きにもとづいて改定するのは薬価制度の根幹であり、薬価が下がるのは仕方ない。患者や医療財政にとってはむしろ歓迎すべきことである。
薬価は国の公定価格だが、医療機関や調剤薬局はそれより安く購入して差益を得ようとする。このことは違法ではなく、売買交渉においては普通の行為である。実際の取引価格にもとづいて薬価を改定するのは、市場経済原理が一定に働いているという点で評価すべきことであろう。薬価の引き下げを回避したいのなら、薬価差益がでないように取引するしかない。
薬価基準制度のこうした基本的なルールに風穴を開けたのが、10年4月から試行的に導入された「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」である。この加算制度は、製薬業界が求めた「薬価維持特例」と実質的には同じもので、一定の要件を満たす特許期間存続中の新薬に対して、薬価引き下げを猶予する。
製薬業界は厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会での来年度薬価改定に向けた議論で、新薬創出等加算制度の恒久化を求めてきた。議論の末、試行導入を来年度も継続するという方向に決まったが、このことは同加算制度が一定に評価された結果といえるだろう。
薬価を維持して製薬企業の研究開発を促し、革新的新薬の創出につなげるのが新薬創出等加算の主目的だが、制度で課せられた未承認適応開発などがまず進んだ。次は新薬創出で成果を出すのが課題だが、医薬品の研究開発は極めて長い年月を要するため、一朝一夕にはいかない。新薬の開発成功確率を上げる工夫もしながら、地道に取り組んでいくしかない。
来年度薬価改定では、長期収載品(後発医薬品のある先発品)が前回と同様、厳しい逆風を受けることが予想される。後発薬は国のさらなる普及促進策が実施されるが、一部の後発品は初収載価格が引き下げられる方向にあり、コスト競争力が一段と問われる。
医薬品を日本の成長牽引産業にするという国の方針は自民党政権時代から貫かれている。新薬創出等加算は、この方針にも沿った薬価制度上の措置であり、継続実施は来年度薬価改定の明るい材料といえる。この制度を大事に育てていくことは、製薬産業の発展にもつながる。