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2011年12月12日 前へ 前へ次へ 次へ

リスク分散に欠かせない複眼的思考

 円高定着や東日本大震災など、製造業を脅かす歴史的な事象が続いている。これを受け、リスク分散に対する意識が急速に高まっている。ただ、リスク分散を図りながら、同時に日本の製造業の競争力を高めるような有効な対応策を構築するには、長期的かつ戦略的な視野が欠かせない。
 1ドル75-78円程度という現在の為替レートが今後も続いた場合、日本を代表する輸出型製造業企業の多くは国内拠点の存続が極めて厳しいとされている。輸出型企業でなくても、為替リスク回避のために国内中心の製造拠点を海外へシフトすることが最重点課題に位置付けられている。
 一方で、急激に円安が進んだ場合、業績が悪化するケースも予想される。円高メリットを享受するため原材料、部材の調達を輸入品に切り替えた企業がそうだ。実は、セットメーカー自身が部品サプライヤーに対し、原材料、部材の一部を輸入品で調達し、コスト削減することを要求しているという。
 円ドルレートは、数年後に再び1ドル100円程度に戻るとの予想も出ている。円高に対応するため海外に生産をシフトした直後に、為替が円安に振れるリスクも十分に想定される。
 東日本大震災やタイの洪水といった自然災害に対応するため、原材料や部品、部材の標準化を進め、サプライチェーンの分断に備える意識も高まっている。生産拠点が限られる原材料や部品・部材については、複数の拠点に生産を分散させる動きも出始めている。
 こうした対応も、日本企業が築き上げてきた強みやコストとの兼ね合いが難しい。部品や部材を標準化すれば、ユニークで独占的な技術が入り込む余地が大きく薄れる。日本の製造業にとって標準化は、むしろ強みを放棄する選択となり得る。また、生産拠点を分散すれば、製造効率ばかりか物流効率が低下するケースもある。地震国である日本に2拠点を持つより、1拠点は地震の少ない海外に設置するといったケースだ。
 こうしたことから、為替レートの変動や自然災害といったリスクに対応するには、原材料から最終製品に至るサプライチェーン全体の縦の最適化と、地政学的な意味での横の最適化に加え、技術力や競争力といった戦略的要素を加味した複眼的思考が欠かせない。
 個々の企業は当面の危機に迅速に対応し、業績回復に全力を投入する必要がある。しかし、長期にわたり有効に機能する対応策を構築するには、サプライチェーンのあらゆる段階のプレーヤーが知恵を絞り、最適解を見つけ出す必要がありそうだ。


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