継続的点検・改善が必要な地域対応
東ソー南陽事業所の塩化ビニルモノマーの爆発事故は、改めて保安防災対策の徹底を喚起する教訓となった。化学企業にとって製造拠点は収益の源泉であり、事故は業績への影響のみならず、社会の信頼を毀損する事態を招く。とくに周辺住民に対する不安の払拭は、生産を継続するうえで最大限の配慮が必要といえよう。各社は今一度、地域との連携、信認を再確認すべきではないだろうか。
現在、国内の主要工業地域では日本化学工業協会の主導のもとレスポンシブル・ケア地域対話を定期的に開催、自治体を交え化学企業と地域住民の共生を目指した取り組みが推進されている。各事業所が取り組む環境改善、成果が発表されるほか、工場見学なども行って地域住民との交流の場となっている。
こうした地域対話は隔年のペースで開催され、すでに8回を数える地区もあり、なかには住民と顔なじみになっているところも出てきている。ただ、本当に交流ができているのか、住民への一方的な説明に終始しているのではないか、もう一度考えるべきではないだろうか。
先日開催した山口西地区の地域対話で印象に残ったのがパネルディスカッションおける会場からの発言。環境改善や社会貢献活動の取り組みを評価する一方で、企業の顔が見えないことに対する苛立ちを募らせている点があった。地域イベントには企業を含め多数の参加者が集まる一方で、自治会などの集まりには企業の関心は低く、地域住民でもある社員と地元との結びつきも強いとはいえず、企業の立場を超えた同じ目線での結び付きを求める意見があった。
長年住み続けてきた住民は、かつて環境汚染がひどかったこともあり、多少の問題があっても気にならないほど慣れてしまい、他地域からの転入者に指摘されるまで気付かないというエピソードが紹介された。こうした状況は正常とはいえないだろう。企業は住民も巻き込んで、より安全・安心な事業所を目指さなくてはいけない。
生産現場では、万が一に備え細心の注意を払ってきたことは間違いないが、人間が介在する以上100%安全とは断言できない。今回の事故はその万が一が起きたケースといえよう。だからこそより多くの目と耳が必要なのだ。とかくマニュアル化すれば安心と思いがちだが、パネルディスカッションのファシリテーターを務めた山口大学の小島直哉名誉教授が指摘した「本当はマニュアル化を進める際の気付き、感覚の部分に深い問題が横たわっている」ことを考える必要がある。企業と地域のあり方、教育をもう一度点検してもらいたい。