課題を抱えながら動き出す液晶新社
日本のディスプレイ産業の存続を賭けて、産業革新機構(INCJ)が中心になり「ジャパンディスプレイ」設立が正式に決まった。競合関係にある3社を統合することで競争力を高めようというものだが、液晶部材業界の反応は意外に冷ややかだ。主要ユーザーがすでに海外勢になっていることに加え、合理的な再編ができるのか、様子見という雰囲気である。
INCJは2000億円を投じて東芝とソニー、日立製作所の中小型液晶事業を2012年4月に統合、事業を開始する。パナソニックから中小型液晶向けとしては最大級の第6世代ガラス基板対応の茂原工場も買収することで生産能力を高め、トップシェアを目指す。
新会社の社長に就くINCJ大塚周一シニア・アドバイザーは、「統合対象各社の経営陣の熱意に感銘して(社長を)引き受けた。高精細化や低消費電力技術で差異化を進める。自らら顧客獲得に動く」と、意欲的に抱負を語り、今後5年以内には株式上場も計画する。
捲土重来を期しての国策に関連業界は大いに活気づくと思われたが、現状は違う。とくに液晶パネル用高純度材料の大手からは、「国が主導した再編策でうまくいくのか」「ライバルがいなくなることで技術レベルはむしろ下がろう」「リストラが迅速にできるか」など消極的な意見が目立つ。この背景には「有力液晶メーカーは海外」という認識だけではなく、新会社躍進の具体的な戦略が見えていないことが大きい。
トップには強力なリーダーシップが求められるが、大塚氏は復権のシナリオに対して「成功する可能性がある」と、慎重姿勢を崩さない。同氏が取締役COOを務めていたエルピーダメモリは09年、改正産業活力再生特別措置法の適用第1号であり、日本政策投資銀行などから支援を受けて経営危機を脱した経緯がある。この経験を踏まえて、今度はディスプレイ業界を立て直すわけだが、エルピーダは今も厳しい経営が続いており、半導体同様に変化の激しい業界だけに「成功する」とは言い切れないようだ。
統合3社の連携、協業も課題になろう。関係筋によると当初は2社連合だったが、発表直前に日立が参画を決めた。日立は台湾CMIに生産を委託してきたが、このCMIの親会社である鴻海精密工業は、「今も日立との関係強化を望んでいるようだ」(台湾の業界筋)とされ、不透明感が残る。
課題は多い新会社だが、多額の税金を投入されるだけに失敗は許されない。有機ELの開発を含めてエルピーダメモリを勝る成果に期待したい。