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2011年11月24日 前へ 前へ次へ 次へ

IEAが示すエネルギー展望の衝撃

 国際エネルギー機関(IEA)が作成した「世界エネルギー展望」は、東京電力福島第1原子力発電所事故後の世界のエネルギーと地球温暖化問題に言及した。IEAは日本に関して2030年の原子力比率は18%まで低下するという前提を示し、エネルギー安全保障の懸念、天然ガスなど化石資源輸入の増加による経済負担、CO2排出量の増加を指摘した。しかも、その影響は海外にも広がるとした。経済産業省が作業を始めたエネルギー基本計画などに一石を投じることは間違いない。
 原発事故のほか、中東・北アフリカの混乱、新興国の経済成長などが重なり合って世界のエネルギーを取り巻く環境は一段と流動化している。IEAでは10年のCO2排出量が前年の反動増で過去最高になり、世界のエネルギー効率は2年連続で悪化、石油輸入金額が過去最高水準など懸念材料を指摘。とくに地球温暖化対策では17年までの対応次第によって、CO2濃度を450ppmレベルで抑制し、世界平均気温の長期的上昇を2度C以内にするという目標達成が容易でないとした。
 とりわけ原発事故の衝撃は大きく、11年版ではOECD諸国で原発の新設なし、新興国を中心とした非OECD諸国では新設計画が半分になるという前提で、エネルギー供給の新たなシナリオを提示した。再生可能エネルギーは増加するものの、IEAの従来シナリオに比較して、35年時点では豪州の一般炭輸出量が倍増、天然ガスはロシアの純輸出量が70%近く増加するなど、供給ソースの寡占化を予測した。一方で発電部分のCO2排出量は6・2%増を見込んだ。エネルギー資源が少なく原発依存を高めようと計画した国ほど影響は大きいとみる。
 日本のエネルギー自給率は、米国の約80%やEUの約50%に対して20%と低い。原発依存度の低下は自給率のさらなる低下につながり、エネルギー安全保障を懸念する。また石炭、天然ガスなどへの依存度を高めるが、なかでも天然ガスの購入金額は、09年から年まで800億ドルに達し、従来見込みに比較して20%以上増える。日本のCO2排出量は従来シナリオより5000万トン多くなる。
 昨年6月に策定したエネルギー基本計画では30年のゼロエミッション電源として原発50%、再生可能エネルギー20%という目標を掲げたが、達成は不可能だろう。再生可能エネルギーの拡充とともに、スマートグリッドの導入などエネルギー使用の最適化、そして安全性を確保しながら原発の維持も迫られる。複雑な連立方程式を解くことになるが、英知を結集してエネルギー戦略の再構築を望みたい。


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