研究開発力の強化に取り組むタイ
10年後のタイは研究開発でもアジアで注目される国の1つとなりそうだ。国を挙げて研究開発支援を行っており、日本の文部科学省にあたるタイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は、2002年にタイサイエンスパーク(TSP)を開設した。広さ14万平方メートルに及ぶパーク内にバイオテクノロジー、金属材料技術、電気・コンピューター技術、ナノテクノロジーの4研究センターと60を超す企業が入居している。
日本企業では資生堂や島津製作所、ポリプラスチックスなどが入居した。NSTDAは現在、イノベーションクラスター2と呼ぶ第2区画の拡張工事を、13年の完成を目指して進めている。A-D棟の4棟があり、D棟はすべて民間企業に賃貸し、技術センターやR&D拠点にしてもらう構想だ。
また、NSTDAから09年に独立した国立イノベーション機構(NIA)は、タイ企業を対象に1件につき最大500万バーツを、3年間を限度にサポートしている。だが、タイの企業はまだ欧米や日本企業に比べ研究開発力が弱いことも現実である。そこでNIAはタイ企業が日本企業と一緒に研究開発に取り組めるように連携支援にも乗り出した。とくに植物資源に恵まれていることから、キャッサバからデンプンを採った後の残渣を利用したバイオエタノールの製造を開始したほか、植物残渣からのバイオプラスチックや植物由来の化粧品成分の製造などさまざまなテーマが考えられる。現在、日本企業が係るプロジェクトは9件もあるそうだ。現地の大学とも組んだ共同開発も考えられるだろう。
日系企業は、まだ今のところ技術サービスを中心としたテクニカルセンターを設けるにとどまっているが、今後の経済発展によって開発機能、現地密着型の研究を行おうという企業が増えてくる可能性もある。
宇部興産は昨年、UBEグローバルイノベーションセンターを開設した。今年は開発に力を入れ、15年には研究にも着手する予定だ。20年には1テーマでいいからタイで独立して運営できる研究テーマ持つという将来像を描いている。
タイは50年に1度といわれる大洪水に見舞われた。これまでは東南アジア諸国のなかでカントリーリスクの低い国という評価が定着し、多くの日系企業が進出している。日本からの投資を引き揚げさせないためにも、タイ政府にはしっかりした治水対策を行ってほしい。一方、日本では日系企業のタイ人従業員受け入れのためのビザ発給が始まった。日本政府もこうした支援を継続し、両国の良好な関係維持に努めてもらいたい。