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2011年11月22日 前へ 前へ次へ 次へ

気になる福島の放れ牛

 原発事故の収束に向けた工程表は、あらためて長年にわたる"未知との遭遇"への挑戦であることを気づかせる。溶融した燃料の処理では先端技術の開発が不可欠だ▼厳しい環境のなかで、放置された犬や猫などの救出にあたるボランティアの活動は気を和ませる。それでも、保護にかかわるコストはほとんど持ち出しという状況らしい▼時折、映像で流れる半径20キロ圏内の警戒区域の実情は厳しい。菅直人前首相が5月に出した「警戒区域内の牛は殺処分する」との指示は唐突感が拭えないが、生産者の心も晴れないままのようだ。畜産関係者によると、大震災前に飼育されていた区域内の牛は約3500頭。生産者の同意を得て薬物で安楽死させるというが、とりわけ繁殖農家には、家族同然の牛を安楽死させることに抵抗感が強い▼問題視されているのは、事故後の「空白期間」を必死に生き延びた"放れ牛"。関係者によると、この野生化した牛は1000頭前後にのぼる。しかし、冬になると草が枯れ、餓死する可能性が高まる▼放れ牛はいぜんとして殺処分の対象だが、被曝調査の貴重な研究対象でもある。このなかで、北里大学などが中心となって警戒区域内の農場で放れ牛を飼育、研究を始める。未曾有の原発事故の"生き証人"である放れ牛の今後を見守りたい。


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