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2011年11月15日 前へ 前へ次へ 次へ

モンタギュー博士に聞く 植物バイオ、社会に不可欠

 植物バイオテクノロジーの活躍舞台が広がっている。食品としての遺伝子組み換え作物(GMO)に対しては反対も多いが、再生可能エネルギーや環境への貢献、化学品、医薬品の製造利用などは社会に受け入れられやすい。70億人規模に膨らんだ世界人口が突き付ける「成長の限界」を打ち破るのは科学技術であり、植物バイオはその可能性を秘める。外来遺伝子を植物の細胞へ効率よく組み込むアグロバクテリウム法を約30年前に故ジョゼフ・シェル博士と開発し、現在の植物バイオの礎を築いたベルギーのマルク・ファン・モンタギュー博士に聞いた。

▼▼植物バイオの重要性をどうみますか。
 「植物は食料や動物用飼料だけでなく、化学工業にとっても非常に重要になっている。農業廃棄物から作った原料はプラスチックに使われている。食料用に成長が早く生産量が多い植物を作り、その廃棄物から化学原料を生み出していけば『グリーンインダストリー』へとつながり、化学工業の環境負荷を低減できる」
 「将来的には製薬産業にとっても重要になるだろう。植物でさまざまなワクチンやバイオ医薬品の製造が試みられており、動物細胞を使う方法よりも安く製造できる可能性がある。開発途上国の人々にもよりよい医療を提供するためには、医薬品のコストを下げる新しい技術が必要だ」

▼▼GMOを口に入れることに対しては拒絶する人も多いのが実情です。
 「グリーンピースやフレンズ・オブ・ジ・アース(地球の友)といった組織が間違った情報を流し続け、人々を混乱させている。彼らはGMOが危険でないという証拠はないというが、起こっていない危険を測ることはできない。交配や品種改良もそうだが、植物の遺伝子変異は自然界では常に起こっている。GMOを作ることは、進化の過程で起こってきたことと同じだといえる」

▼▼欧州のGMOに対する規制は厳しいとされます。
 「この5年間で政府やEU当局の対応も変わってきた。彼らは経済・産業的にGMOがより必要とされることに気付き、GMOに危険はないと理解している。しかし政治家は選挙に当選しなければならず、社会がGMOを受け入れるかどうかを見守っている。新しい製品があり、社会に必要とされれば受け入れられる。世界人口は数百年前と比べ3、4倍になった。かつて可能だったことも、70億人になれば無理がでてくる。その解決に植物バイオは不可欠になるだろう」

▼▼これからの課題は。
 「植物バイオによって開発途上国に手を差しのべる支援活動を行っている。現在は規制対応コストが高くつくため、植物バイオ利用製品は多国籍企業によってしか作られていない。こうした独占はよくない。途上国で植物バイオ製品への投資ができるようにするには規制を見直し、これまで必要だった非常に多くの試験の費用を製品開発に充てられるようにすることが必要だ」
(聞き手=栗原茂実)


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